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消防法29条|破壊救助を根拠と共に徹底解説|救急隊が窓破壊?

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救助隊の活動についてこの記事を読んだらわかること

今回は、消防隊による人命救助活動の際の建物の破壊(処分)行為についてレポートします。破壊行為というと、乱暴に聞こえるかもしれませんが、人命検索の場においては、判断を迫られることがあります。重要なポイントは次の2つです。

  • 破壊行為は認められている
  • 破壊は許されるが、修復費用は消防負担

この2点がポイントになっています。それでは、詳しく説明します。

火災時の人命救助活動における建物の破壊(処分)行為は認められている

一般の人が、他人の所有物を損壊、破壊すると、刑法第261条に定められた器物破損罪が適用され、罰せられます。これは、法律に規定されているため、日本に住んでいる人は全員対象です。

  • 他人の家のドアを壊せば、器物破損罪です。
  • 他人の家の窓を割っても、器物破損罪です。

では、消防士についてはどうでしょうか。119番通報があったとします。隣の一戸建ての住宅用火災警報器が吹鳴しており、煙が充満しているとの通報です。出動します。通報者に接触します。通報者によると、玄関や窓には鍵がかかっていて、中の状況は確認できないようです。

家人は、出かけるときはいつも車だそうです。車は駐車場に停まっています。家の中にいる可能性は非常に高そうです。近所に、家の鍵を持っていそうな親せきなどはいないか確認しても、独り身で親せきはいないそうです。

このような場合、消防隊は、破壊行為の判断を迫られます。状況的に、選択肢がなかったため、リビングの掃き出し窓を破壊し、人命検索を行いました。しかし、家の中に家人はいません。すると、家人が徒歩で帰ってきました。

家の中では、なんとバルサンが焚かれています。そうです、誤報です。さぁ、困りました。家人としてはいい迷惑ですよね。家中のゴキブリやダニを殺してやったぜと、意気揚々と家に戻ったら、消防車がたくさん来ており、家の窓は割られているわけです。

ふざけるなと怒り狂っても仕方ありません。家人は言います。

何をやっているのだ!勝手に人の家を壊しやがって!

器物破損罪で訴えてやる!壊した窓も弁償しろ!

はい、ここで、本題に戻ります。火災における緊急措置(使用、処分、制限)や費用負担については、消防法第29条に規定されています。

消防法第29条(消火活動中の緊急措置等)

消防吏員又は消防団員は、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために必要があるときは、火災が発生せんとし、又は発生した消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。

② 消防長若しくは消防署長又は消防本部を置かない市町村においては消防団の長は、火勢、気象の状況その他周囲の事情から合理的に判断して延焼防止のためやむを得ないと認めるときは、延焼の虞がある消防対象物及びこれらのものの在る土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。

③ 消防長若しくは消防署長又は消防本部を置かない市町村においては消防団の長は、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために緊急の必要があるときは、前二項に規定する消防対象物及び土地以外の消防対象物及び土地を使用し、処分し又はその使用を制限することができる。この場合においては、そのために損害を受けた者からその損失の補償の要求があるときは、時価により、その損失を補償するものとする。

④ 前項の規定による補償に要する費用は、当該市町村の負担とする。

⑤ 消防吏員又は消防団員は緊急の必要があるときは、火災の現場附近に在る者を消火若しくは延焼の防止又は人命の救助その他の消防作業に従事させることができる。

消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)

今回の事例でいうところの窓の破壊、つまり破壊行為というのは法文中の「処分」に含まれています。この法文を簡単にいうとこうです。

  • 消防隊は、消防活動のために緊急の必要があれば、建物を壊すことができるよ
  • 壊した後で、壊された人から直してと言われたら直してね

と、いうものです。先ほどの家人の要求は2点ありました。

  • 器物破損で訴える
  • 壊した窓を直せ

消防本部がとるべき対応は明白です。1番については、法律で認められている行為なので違法性がありません。

(正当行為)

第三十五条 法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

(緊急避難)

第三十七条 自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、これによって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。ただし、その程度を超えた行為は、情状により、その刑を減軽し、又は免除することができる。

② 前項の規定は、業務上特別の義務がある者には、適用しない。

刑法より引用

2番については、窓を直す必要があります。窓を直すお金は、その消防本部を運営している市町村町の税金です。そのため、窓の破壊に至るのは、あくまでも最終手段です。それまでには次のようなことを試します。

  • 家族や親族から、壊しても、弁償しなくてよい旨の同意を得る
  • 警察に破壊してもらう
  • 鍵屋さんを呼び開錠してもらう(鍵屋の費用は家族や親族が払ってくれる旨の同意を得たうえで)
  • 緊急性が低ければ、何もしない
  • 親族の到着を待つ
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水災時の人命救助活動における建物の破壊(処分)行為についてはどうだ?

火災時は、先ほどの消防法第29条により、器物破損罪にはなりませんでした。では、台風による大雨などで、洪水があった場合はどうでしょうか?

洪水があったため、消防隊がボートで救助活動に向かったとします。1階はすべて浸水していますが、2階はまだ浸水していません。生存者のいる可能性があります。しかし、2階の窓には鍵がかかっており、人命検索ができません。2階のベランダには洗濯物が見えるため、空き家でないことは確かです。

窓を破壊して、2階に侵入し、屋内検索を実施します。階段の途中まで水没しているため階段下の人命検索はできませんが、とりあえず2階には誰もいません。後からわかったことですが、どうやら家人は、泥棒が入らないように家の戸締りをして、台風に備え高台の公民館に避難していたようです。台風が過ぎさり、数日たち、水位が下がります。家人が家に帰ります。

1階は水没して使い物にならないな。

とりあえず浸水は免れた2階で過ごして、1階の復旧作業にかかろう ・・・

しかし、浸水していないはずの2階の窓は割られ、誰かが侵入した形跡があります。割れている窓の前には足場がないため、空でも飛べない限り、この窓から人は入れません。そこで家人は気づきます、洪水時にボートに乗っていた消防隊が割ったに違いない。

窓を弁償してもらおう。先ほどの、火災の事例と同じような状況です。これが火災なら、消防法に根拠があり

  • 器物破損罪にはならない
  • 壊した窓は消防が弁償する

というものでした。しかし、災害種別が違います。消防法第29条には、「消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために緊急の必要があるときは、・・・」と書いてあります。今回のような洪水、大きい意味では水による被害ということで水災ですね、水災については書いていません。

さらには、消防法第36条第8項に次のように書かれています。

消防法第36条第8項

第18条第2項、第22条及び第24条から第29条まで並びに第30条の2において準用する第25条第3項、第28条第1項及び第2項並びに第29条第1項及び第5項の規定は、水災を除く他の災害について準用する。

消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)

準用、準用と、何を書いているのかさっぱりわかりませんね。要約すると、消防法第29条に書いてあった

  • 消防隊は、消防活動のために緊急の必要があれば、建物を壊すことができるよ
  • 壊した後で、壊された人から直してと言われたら直してね

というルールは、水災以外の災害にも使っていいよ!というものです。

え?水災だけ、どうしてわざわざ消防法の規制から外しているの?

理由は、水災に関する内容は、昭和24年に制定された水防法に規定されているからです。ということは、消防は、壊した窓を修理するだけでなく、器物破損罪でも訴えられてしまうのでしょうか。答えは、NOです。理由は次のとおりです。水防法の規定を解釈することで理解できます。

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救助要請について「水防法」における規定

水防法第28条に、緊急措置についての記載がります。

水防法第28条(公用負担)

第二十八条 水防のため緊急の必要があるときは、水防管理者、水防団長又は消防機関の長は、水防の現場において、必要な土地を一時使用し、土石、竹木その他の資材を使用し、若しくは収用し、車両その他の運搬用機器若しくは排水用機器を使用し、又は工作物その他の障害物を処分することができる。

② 前項に規定する場合において、水防管理者から委任を受けた者は、水防の現場において、必要な土地を一時使用し、土石、竹木その他の資材を使用し、又は車両その他の運搬用機器若しくは排水用機器を使用することができる。

③ 水防管理団体は、前二項の規定により損失を受けた者に対し、時価によりその損失を補償しなければならない。

水防法(昭和24年6月4日法律第193号)

消防法と同じく難しいことが書いてありますが、3つの解釈の工夫をすることで、答えが出ます。

  • 人命救助を目的とする旨の記載はないが、水防活動の際における人命救助は、水防法が究極的には人命の保護を目的とするものであるから、水防の範囲に含まれると解される。
  • 「水防のため緊急の必要があるとき」とは、洪水、雨水出水、津波又は高潮により堤防等が決壊の危険にさらされており、その区域の水防管理団体の人員及び資材をもって水防活動を行うのみでは防護することが困難であると認められる場合等をいう。
  • 「工作物その他の障害物を処分することができる」とは、水防に支障のある家屋その他の建築物、施設、立竹木等の物件を破壊したり除去したりすることである。

この3点から、水災時における人命救助等のために行う緊急的な建物の破壊行為については、消防法上の規定はないが、水防法第28条を根拠に行うことが可能であると解釈できます。したがって、先ほどの事例においても火災と同じように

  • 器物破損罪にはならない
  • 壊した窓は消防が弁償する

という対応が正解となります。

消防士に学びたい

消防法29条|破壊救助を根拠と共に徹底解説|救急隊が窓破壊?のまとめ

消防は、火災のときでも、水災のときでも、人命救助のために、緊急の必要があれば、建物を壊すことができるものの、壊された人から直してと言われたら、直す責任があることが良くわかりました。

ただ、法律上はこのようになっているものの、現実的には消防機関に対して弁償を求める市民は少ないようです。人命救助のために行った行為ということもあり、人間心理が働くためだと考えられます。

今後も、新しい情報が入り次第、レポートを更新していきます。


この記事を読まれた方で、さらに詳しく知りたいことがあれば追跡調査しますので、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご質問ください。


また、消防関係者の方で、うちの本部ではこうなってるよ、それは違うんじゃない?などのご意見をいただける際も、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご連絡いただけると助かります。

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