今回は、消防士の人たちが、日ごろの業務で感じている一般市民への思いをお知らせします。細かい事まで言い出すとキリがないので、頻度の高い大きな3つのお願いごと、
について紹介します。今回の記事も、現役消防士の方や消防職員OBの方々からの調査結果をもとにレポートしています。
消防士からのお願い1つ目!消防車や救急車が緊急走行で近づいてきたときのひと工夫
車やバイクを運転中に、サイレンを鳴らし、赤色の警光灯を点灯した消防自動車や救急自動車が近づいて来たら、どういう行動をとっていますか?進路をスムーズに譲ることができていますか?
消防自動車や救急自動車などの緊急自動車は、火災現場への出動や、傷病者を病院へ搬送するなど、緊急性の高い業務を行うことから、一刻も早く災害現場や医療機関に到着する必要があります。そのため、道路交通法においては、次のような特例が認められています。
しかし、これらのことは、法律上認められているというだけであって、危険な行為であることに変わりはありません。緊急自動車が安全に通行するためには、 一般車両の協力が必要不可欠です。道路交通法では、緊急自動車が接近してきた場合の対応が、次のように定められています。
<交差点又はその付近の場合>
交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となっている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合は、道路の右側。)に寄って一時停止しなければならない。
<交差点又はその付近以外の場合>
道路の左側に寄って、緊急自動車に進路を譲らなければならない。
緊急自動車を運転している消防士の不安
緊急走行をしていて、交差点に停車している車列の間を通過するときなど、大きな心配事があります。それは、“緊急車両の存在に気づいているのか?”ということです。
サイレンを鳴らしているのだから、気づいているに決まってるじゃない?
と思うかもしれませんが、自分が運転をしている時を思い出してください。
あれ、救急車だ、意外と近くにいたのに気づかなかったな
という経験、ないですか?バイクに乗っているときなら気づきますが、自動車に乗っているときは、誰しも経験したことがあるはずです。消防士も、プライベートではこのことを経験しています。だからこそ、不安になるわけです。
たまたま停まっているだけで、本当は緊急車両が近づいていることに気づいていなくて、急に動き出さないかな???
と、思うわけです。あからさまに、斜めに車を寄せて停まって道を譲ってくれている車なら安心です。しかし、道幅の大きな道や複数斜線ある道などでは、車体の小さい軽四自動車などの場合、車体がまっすぐのままでも、少し横にずれているだけで大型車両(消防タンク自動車や救助工作車)などでも通過することができます。このような場合、
どちらの状態かわかりません。
緊急自動車を運転している消防士の不安の解決策
緊急自動車が近づいてきたとき、左側に寄って一時停止しなければならないことは先ほど言ったとおりです。法律で決まっています。法律では決まっていませんが、消防士の不安を解消してスムーズな緊急走行が行えるよう、みなさん、ハザードランプを点滅させませんか?ハザードランプの点滅は、
緊急車両に気付いているよ!
という意思表示になります。ハザードランプがついていれば、中途半端な幅寄せの車両がいても、たまたま端に寄っているのか、意図的に端に寄っているのかの判断ができます。みなさん、自動車の運転中に緊急車両が近づいてきた場合は、左端に寄って一旦停止+ハザードランプの点滅で、スムーズな緊急走行の手助けを行いましょう。
消防士からのお願い2つ目!「消火栓」や「防火水そう」付近は駐車禁止!
みなさんは、「消火栓」や「防火水そう」っていうものをご存じですか?これらは、消火活動には欠かすことのできない施設です。火災の消火には、水が必要不可欠です。消火栓というのは、地下を通っている水道管から、消防隊が消防車で水を吸い上げるための出口のようなものです。防火水槽というのは、地下に埋まっている、水がたくさん入っている大きな地下タンクです。
火災発生時、消火に必ず必要となる水を消防隊に供給する重要な施設です。「消火栓」や「防火水そう」にある水の出口となる部分は、道路脇や歩道上などにあるマンホールの下に設置されています。その位置を示すため、
などがあります。また、「消防水利」として指定されている
なども、消火活動に利用しています。「消防水利」というのは、消防士たちが、近くで火災が発生した際に、消火活動のために使用する場所として、日常から管理している施設です。
例えば、学校のプールの水を抜いて掃除をするときは、学校は管轄の消防署へ連絡することになっています。
学校のプール脇にあるフェンスを、気にして見てみてください。
消防水利に指定されているプールであれば、フェンスの一部分が外れるような仕様であったり、小扉が開くような構造をしています。
プールの水を、消防車で吸い上げるための吸管ホースを通すための場所です。
これらの消防水利等の周辺は、道路交通法で駐車が禁止されています。また、消防隊は定期的に調査や点検を行い、不備のある水利施設の整備を行っています。いつどこで火災が発生しても、すぐに、確実に消火活動ができる体制をとっています。
しかし、せっかくの施設も、火災発生時に「消火栓」や「防火水そう」付近に駐車された一般車両が障害となり、消火活動の妨害になるといったケースが発生しています。違法な駐車は、一刻を争う消火活動の障害になります。消防水利の利用に影響しないように、路上駐車をするときには周囲に気をつけてください。道路交通法で駐車を禁止している、消防に関係した場所は次のとおりです。
1 消防水利の周辺
- 消火栓から5m(メートル)以内の部分
- 消防用防火水そうの吸水口若しくは吸管投入孔から5m(メートル)以内の部分
- 消防用防火水そうの側端又はこれらの道路に接する出入口から5m(メートル)以内の部分
- 指定消防水利(プール、池、井戸、河川等)の標識が設置されている位置から5m(メートル)以内の部分
2 その他
- 消防用機械器具の置場(消防自動車等の車庫や消火用ホース格納箱等)の側端又はこれらの道路に接す る出入口から5m(メートル)以内の部分
- 火災報知機から1m(メートル)以内の部分
- 駐車車両の右側の道路上に3.5m(メートル)以上の余地がない場合
消防士からのお願い3つ目!車に乗っていて火災現場に遭遇、目の前にはホースが!
自動車に乗っているとき、消防隊が活動中の火災現場に遭遇したら、どんなことに注意すればいいでしょうか。もちろん、交通整理をしてくれている警察官の誘導にしたがって、安全に通り過ぎたらよいだけのことですが、1点だけ注意してもらいたいことがあります。
先ほど言ったように、消火活動には水が欠かせません。その水を運ぶのは、消防ホースです。住宅街で火災が発生した場合、基本的には、道路を、消防ホースが横断しないように気をつけています。しかし、条件的に仕方なく、車が通行する道路を消防ホースが横断することがあります。あなたが、自動車で走行中、目の前に消火活動に使用されている消防ホースが現れるとします。
さーどうしますか?
え?水が通っているだけのただのホースでしょ?普通に上を車で通っても問題ないんじゃないの?庭に水をまく水道のホースだって、踏んでも何ともないよ。
この考えが大きな間違いの元なのです。実は、火災現場で放水中の消防ホースというのは、内圧には非常に強く作られており、使用圧力1MPa以上、検定圧力2MPa以上の強度を誇ります。内側を、高圧の水が通過するので当然です。しかし、内圧に耐えうる設計上、どうしても外圧に弱くなってしまいます。結果、放水中のホースの上を自動車が通過してしまうと、ホースに破断が生じます。
かんたんに言うと、破れます。水がピューピュー吹き出ます。水がピューピュー吹き出ると、筒先(ホースの先の水の出口)では放水圧力が下がります。放水圧力が低いと感じた筒先隊員の消防士は、無線を使って、放水圧力を上げるように、機関員(消防車の操作者)に指示を出します。ホースの内圧が高まったことで、ホースの破れた個所はさらに被害が拡大します。悪循環ですね。
この悪循環を防ぐには、ホースを破らないことが肝心。
じゃあUターンしてホースの上を通らないようにするしかないの?
ここで解決策です。じつは、ホースブリッジという、ホースの上を自動車が通れるようにする道具があります。このようなものです。
この上を車のタイヤが通れば、通水された消防ホースに自動車の重みはかかりません。ホースが破けることはありません。しかし、不思議なことに、ホースブリッジを設置しているにもかかわらず、あえてホースブリッジを避けてホースの上を通る自動車が後を絶たないようです。
ん?何か黒いものがあるな、踏んで壊れたら困るし、水が通っているだけのホースの上でも通っておけば大丈夫だろう。
という心理状態だと思われます。みなさん、自動車に乗って、消防隊が活動中の火災現場を通りかかり、ホースの上を通らなければならないときは、ホースブリッジの上を通ってください。
消防ホースは車で踏んでもいい?消防士から3つのお願い!のまとめ
消防士が、普段から困っており、市民に伝えたいことを3つ紹介しました。
この3点、消防業務がスムーズに行われるように、ぜひ実践してください。
今後も、新しい情報が入り次第、レポートを更新していきます。
この記事を読まれた方で、さらに詳しく知りたいことがあれば追跡調査しますので、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご質問ください。
また、消防関係者の方で、うちの本部ではこうなってるよ、それは違うんじゃない?などのご意見をいただける際も、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご連絡いただけると助かります。
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