救急車の有料化という言葉を聞いたことがありますか?日本では、救急車の利用は無料ですが、他の国では有料の場合が多いです。最近では、日本でも救急車の有料化を検討する動きがあります。
救急車の有料化は、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?この記事では、救急車の有料化について、その背景や理由、影響や課題などを分かりやすく解説します。
救急車の有料化とは?その背景と理由
救急車の有料化とは、救急車の利用に対して一定の料金を徴収する制度のことです。救急車の有料化を検討する背景には、以下のような要因があります。
救急車の有料化の理由は、救急車の適正な利用を促し、救急医療の財政的な負担を軽減し、救急車の不足や待機時間の延長を防ぎ、救急医療の質の向上や医療崩壊の回避を図ることです。
救急車の有料化のメリットとは?
救急車の有料化には、以下のようなメリットが期待されます。
救急車の有料化によって、救急車の利用に対する意識や責任が高まり、救急車の過剰利用や不適切な利用が減少すると考えられます。これによって、救急車の空車率が増え、救急車の効率的な配分や運用が可能になります。
また、救急車の有料化によって、救急車の運営費用の一部が回収され、救急医療の財政的な負担が軽減されます。さらに、救急車の有料化によって、救急車の利用者が適切な医療機関に搬送され、救急医療の質が向上し、医療崩壊の危機が回避されると期待されます。
救急車の有料化のデメリットとは?
救急車の有料化には、以下のようなデメリットも存在します。
救急車の有料化によって、救急車の利用に対する心理的な抵抗や経済的な負担が増え、救急車の必要な利用が抑制されたり、遅延したりする恐れがあります。これによって、救急車の利用者の健康や命に影響が及ぶ可能性があります。
また、救急車の有料化によって、救急車の料金の負担や不公平感が増加すると考えられます。救急車の利用は、個人の意思ではなく、事故や病気などの不可抗力による場合が多いため、救急車の料金を支払うことに対する不満や不平が生じる可能性があります。
さらに、救急車の有料化によって、救急車の料金の徴収や管理に関する困難さが生じると考えられます。救急車の利用者は、救急車の料金を支払う能力や意思がない場合や、救急車の料金を支払う方法や手続きが分からない場合があるため、救急車の料金の徴収や管理には多くのコストや労力がかかる可能性があります。
また、救急車の料金の設定や適用には、救急車の利用の状況や程度、救急車の種類や距離、救急車の利用者の所得や保険など、様々な要素を考慮する必要があり、救急車の料金の設定や適用には多くの複雑さや問題が伴う可能性があります。
先行例①三重県松坂市の救急車有料化
三重県松坂市で2024年6月から施行された救急車有料化について、その背景や内容、影響などを詳しく解説します。
三重県松坂市の救急車有料化の背景と目的
三重県松坂市では、2024年6月から救急車の利用に対して、料金は”入院なしの場合”で7700円の負担金を徴収することになりました。これは、市内の救急車の出動件数が年々増加し、市の財政負担が重くなっていることに対処するための措置です。
救急車利用者のうち、救急医療を必要としない軽症の場合や、救急車をタクシー代わりに利用する不適切な利用が約3割を占めていると推定されています。このような状況は、救急車の運行コストや人員の確保に大きな負担をかけるだけでなく、本当に救急車を必要とする重症の患者の救命率や救急医療の質にも影響を及ぼす恐れがあります。
そこで、市は、救急車の利用に負担金を課すことで、救急車の適正な利用を促し、救急医療の充実や財政の健全化を図ることを目的としています。
三重県松坂市の救急車有料化の内容と対象者
三重県松坂市の救急車有料化は、市内で救急車を利用した場合に、一律で7700円の負担金を徴収するというものです。この負担金は、救急車の出動から搬送までの一連のサービスに対するもので、救急車の距離や時間に関係なく、一律で課せられます。
また、救急車の利用者が市外の住民であっても、同じく7700円の負担金がかかります。ただし、以下のような場合は、負担金の免除や減免が認められます。
負担金の支払いは、救急車の利用者本人やその代理人が、救急車の搬送先の医療機関で行います。対象となるのは市内の基幹病院である、
7700円は救急搬送に伴う費用ではなく、紹介状を持たずに外来で受診した患者が病院に支払う「選定療養費」だそう。
三重県松坂市の救急車有料化の影響と評価(令和6年7月時点)
2024年(令和6年)6月の救急車の出動件数は前の年の同じ月に比べ2割以上減ったということですが「まだ始めたばかりで効果を検証中だ」としています。運用から1か月がすぎ、6月の救急車の出動件数は1031件と、前の年の同じ月と比べて2割以上減ったということですが、徴収した件数や搬送されて入院に至らなかった割合など、運用の効果はまだ検証中だとしています。
また、市民からの問い合わせは20件ほどで、「熱中症でも徴収されるのか」とか「軽症かどうか自分でわからない場合、どう判断すればいいのか」といった内容が多かったということです。
松阪市健康づくり課の担当者は「地区の救急医療体制を守るため、2年にわたり関係機関と検討を行ってきました。データがそろい次第、効果を検証しつつ、中等症以上の患者を受け入れる3つの大病院と、かかりつけ医などとの役割に応じた受診をしてもらえるよう周知を続けたい」と話しています。
先行例②茨城県の救急車有料化
茨城県では救急車の適正利用を促すため、県内の大病院に救急車で搬送されても緊急性が認められなかった場合、病院が患者から7700円以上を徴収する運用を令和6年12月から始めます。都道府県単位でこうした運用を行うのは茨城県が初めてです。
令和6年12月から茨城県内の200床以上の23の大病院に救急車で搬送され緊急性が認められない場合、病院が「選定療養費」として、患者から7700円以上を徴収します。
「選定療養費」は、患者が紹介状なしに大病院を受診した場合に徴収されるもので、いまは救急車で搬送された場合は一律に徴収の対象外となっていますが、この運用を改めるものです。
緊急性を認めるかどうかについては、県と医療機関などが協議して、統一的な基準を設定します。茨城県では、救急搬送された患者の6割以上が大病院に集中していて、このうち軽症患者はおよそ半数を占めているということです。
また、令和6年4月からは医師の時間外労働の規制が始まり、救急医療の現場のさらなるひっ迫が懸念されており、緊急性の高い重症の患者の救急搬送を確実に進めるために、有料化に踏み切ったようです。
まとめ
救急車の有料化は、救急車の適正な利用を促し、救急医療の財政的な負担を軽減し、救急車の不足や待機時間の延長を防ぎ、救急医療の質の向上や医療崩壊の回避を図るというメリットがありますが、救急車の必要な利用の抑制や遅延、救急車の料金の負担や不公平感の増大、救急車の料金の徴収や管理の困難さ、救急車の料金の設定や適用の複雑さというデメリットも存在します。
救急車の有料化は、救急車の利用者や救急医療の関係者、社会全体に影響を及ぼす重要な問題です。
消防行政を所管する総務省消防庁においても、救急業務の有料化についてさまざまな検討が繰り返し行われていますが、結論に至っていません。
救急車の有料化を導入するかどうかは、慎重に検討する必要があります。救急車の有料化について、あなたはどう思いますか?ぜひ、コメント欄で意見をお聞かせください。
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