こんにちは、TEAM WEBRIDです。
今回の記事は、消防士の副業について。
副業の中でも、YouTubeがテーマです。
消防士YouTuberが懲戒処分を受けたというニュースが流れました。
さて、その中身やいかに。
今回の記事も、現役消防士や消防職員OBへの取材をもとに解説します。
この記事を読むことで、消防士YouTuberが懲戒処分を受けた内容や、消防士をとりまく副業環境が理解できます。
それではレポートします。
消防士YouTuberが副業で懲戒処分を受けた内容は?
✓どんなことが起きたのか?
消防士がYouTubeでゲーム実況を行い、約115万円を稼ぎ、副業で地方公務員法違反として懲戒処分を受けた。
✓どこの消防本部か?
三重県 和歌山市消防局。
✓所属は?
和歌山北消防署。
✓階級や年齢は?
33歳の消防士長。
✓処分の内容は?
減給1か月の懲戒処分。
✓YouTubeに動画を投稿していた時期は?
2020年12月から2021年10月までの10カ月。
✓YouTubeチャンネルの内容は?
投稿者「足湯」。
チャンネル名「ASHIYU CHANNEL」。
チャンネル登録者数 約1.5万人。
ゲーム実況動画 314本。
再生回数のべ227万回。
実況ゲーム「人狼」「Among Us」。
✓事実が発覚した経緯は?
「消防士がYouTubeで副業をしている」と匿名での通報があったこと。
✓本人のコメントは?
「副業にあたらないと思った。」
「認識が甘かった。」
消防士(公務員)の副業についてはどのようなルールが存在しているのか
消防士の副業については、地方公務員法にルールが記載されています。
詳しくは消防士ドットコム内のこちらの記事をご覧ください。(※別タブで開きます)
上記の記事内でも触れていますが、消防士の副業禁止というのは、厳密には、営利企業への従事等が禁止されているということです。
その根拠がこちら、地方公務員法。
(営利企業への従事等の制限)
第三十八条 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第一項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
後段の、
「自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
という部分がポイントです。
要は、YouTubeによるお金の受け取りは、報酬を得て事務に従事したことになるのかどうかということ。
シンプルに考えれば、
「そりゃ、副業だよね。」
と解釈しがちですが、ここは公務員の世界、解釈のしかたによってはそうとも限らないようです。
その理由を説明します。
考え方によっては消防士がYouTubeで報酬を得ても副業にならないのではないか?
消防士に限らず公務員の世界は、ルールがすべて法律に書かれています。
細かすぎて法律に書ききれない部分は、運用要綱やガイドラインなどいろいろな形で説明を伴います。
これらのルールの捉え方次第では、消防士がYouTubeで報酬を得ても副業にならないのではないかという考え方が浮かびます。
その資料というのがこちら、義務違反防止ハンドブック。
発行しているのは人事院。
人事院というのは、国家公務員の人事行政を司る部署です。
消防士は地方公務員ですが、上級公務員である国家公務員のルールにも従います。
従うというか、国家公務員のルールにならって地方公務員のルールができています。
この 義務違反防止ハンドブック の中では、「報酬」の定義について、次のような説明が書かれています。
「報酬」は、「労務、仕事の完成、事務処理の対価として支払われる金銭その他の有価物」を指します。
前半の、「労務、仕事の完成、事務処理の対価」という部分、YouTubeをイメージすると、違和感がありませんか?
というのも、このルールが表現しているものは、わかりやすいところでいうとアルバイトです。
時給1,000円のアルバイトでは、1時間働いたら1,000円の報酬が得られます。
1時間の労務(アルバイト)の対価として金銭という報酬を得る。
これを、消防士が行ってはいけないと禁止しているわけです。
義務違反防止ハンドブック内で説明されている事例はこちら。
任命権者の許可を得ることなく、勤務時間外に、飲食店でアルバイトを行い、報酬を得ていた
この事例では、当事者は減給処分を受けています。
飲食店でのアルバイト代とは、まさしく労務の対価として支払われた報酬です。
明確に禁止されていることなので、処分を受けて当然です。
わかりやすいように、別のケースも紹介します。
例えば、ココナラなどの依頼を受けるとします。
具体的には、手書きの似顔絵だとします。
指定された写真を見て、手書きの似顔絵を書くことが依頼です。
1枚、3,000円の依頼だとします。
この場合だと、似顔絵の作成という仕事の完成に対し、その対価として金銭の報酬が支払われます。
つまり、消防士(公務員)には禁止されている副業に該当するということです。
※ココナラとは、「知識・スキル・経験」といった得意を売り買いできるスキルマーケットです。
サービス内容をみるさて、ではYouTubeに目を向けてみましょう。
動画を撮って、編集して、いざYouTubeに動画をアップロード。
はい、何円ですか?
もちろん0円ですね。
労務、仕事の完成、事務処理をこなしたにもかかわらず、報酬は0円です。
さらに動画を撮影し、編集し、どんどんYouTubeに動画をアップロードします。
さぁ、労務、仕事の完成、事務処理の対価として報酬を受け取りましょう、何円?
0円です。
これ本当に副業と呼べるのでしょうか?
ちなみに、YouTubeの収益化条件はこちら。
一般人では、相当な時間と労力をかけても容易にたどり着ける条件ではありません。
時間をかけ、技術や知識を磨き、世間に認められることでやっと収益化にたどりつけるものです。
はい、この時点で何かに似ていませんか?
そうです、小説家です。
小説家というのは、昔から公務員にも認められた副業のひとつです。
その他の副業についてはこちら。
現役の公務員小説家というのはインターネットで調べればいくらでも出てきます。
ただし、公務員小説家が認められるには条件があります。
義務違反防止ハンドブックに書かれている副業として認められる条件をまとめると次のとおり。
もしも、消防士YouTuberの足湯さんが、この条件を満たしていたとしたら?
この疑問を解決する方法は、たったひとつ、足湯さんが、懲戒処分を不服だとして、和歌山市が設ける人事委員会(又は公平委員会)に審査請求(不服申立て)を行うことです。
審査請求において、処分の取り消しが行われなかった場合は、いよいよ裁判です。
和歌山市に対する審査請求が棄却されてはじめて、取消訴訟(行政事件訴訟)を裁判所に提訴することができます。
裁判で判決が出れば、全国の消防士がこの判例を参考に行動できるようになります。
和歌山の消防士ゲームYouTubeの懲戒処分は正しかったのか?まとめ
消防士YouTuberが懲戒処分されたという事実をもとに、YouTuberという副業についてレポートしました。
消防士(公務員)のルールを決めるのは法律です。
法律に書いていない部分で判断が必要な場合は、裁判で争い、白黒つけるしかありません。
TEAM WEBRIDとしての見解は、法律が現代の多様な報酬制度に見合っていないと判断します。
「報酬」は、「労務、仕事の完成、事務処理の対価として支払われる金銭その他の有価物
と国は示していますが、YouTubeによる報酬は適切に判断できないのではないでしょうか。
和歌山市消防局による懲戒処分は本当に正しかったのかどうかに白黒つけることができるのは、足湯さんの行動次第です。
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