こんにちは、TEAM WEBRIDです。
今回のテーマはトリアージについて。
多くの被害者が発生する事故や災害ニュースなどで、被害者の人の手に「色のついた紙」がぶら下がっているのを見かけたことがありませんか?
あれは「トリアージタッグ」と呼ばれています。
何のためにトリアージタッグを利用するのでしょうか?
そもそもトリアージとは何のことなのでしょうか?
どのようなメリットがあるのか?
今回はこのような話になっています。
今回も、現役消防士や消防職員OBへの取材をもとに説明します。
この記事を読むことで、トリアージについて詳しく理解することができます。
それではレポートします。
消防士が行うトリアージとは?
トリアージの定義はこうです。
【病院での治療を受ける必要のある複数の傷病者に対して、搬送を行う順番を決定する1つの過程】
簡単に言えば、「順番決め」とイメージしてください。
消防士が災害現場で使用するだけの言葉なわけではありません。
医療機関において、日常の救急外来や初診外来、電話受付などでも使用されています。
消防士の世界で使われるトリアージは、「多数傷病者発生時に使われているSTART Triage(以下、START法)」のことです。
START法のトリアージを行う目的は?
「多数傷病者発生時」に消防士が使用するSTART法により、傷病者の緊急度や重症度を把握することができます。
多数傷病者発生時は、搬送が必要な傷病者に対して救急車の数が不足します。
つまり、
現場で必要な消防力 >>> 実際の消防力
という状態です。
このような状況下では、最も効率の高さを考えた消防サービスを提供しなければなりません。
そこで、トリアージ(順番決め)が必要になってきます。
もちろん、
現場で必要な消防力 ≦ 実際の消防力
であれば、傷病者全員に平等な消防サービスを提供することはマスト条件です。
しかし、消防力が劣っているため、傷病者全員への平等な消防サービスはできません。
そこで、次の3パターンの傷病者を消防サービスの提供相手から外します。
または、後回しにします。
こうすることによって、消防サービスの提供先が減り、
現場で必要な消防力 ≦ 実際の消防力
という状態にもっていけるわけです。
この際に、START法が役立ちます。
START法とは?どんな手法?
START法によるトリアージを説明します。
観察の結果を、優先度ごとに色分けします。
その色とは、後で説明するトリアージタッグの色です。
トリアージタッグとはこのようなモノです。
まず、「自分で歩けるかどうか」を判断します。
歩ける場合、「負傷があるか、具合が悪いかどうか」を確認し、何も問題がなければ「ノーダメージ」と判断します。
つまり、消防サービスの提供相手から外れます。
START法の「緑色」判定
負傷があったり、具合が悪かったりした場合は「緑」と判断します。
トリアージの結果を色で表現します。
この色の役割については、トリアージ・タッグに関係します。
後ほど説明します。
この「緑」は「早急な治療の必要がない傷病者」を意味しています。
つまり、消防サービスの提供相手から外れます。
START法の「黒色」判定
歩けない傷病者に対しては、「呼吸」ができているのかを確認します。
呼吸ができていなければ、気道確保をおこないます。
気道確保を行っても、呼吸ができなければ「黒」と判断します。
この「黒」は「明らかに死亡しているもの、または通常時でも救命できないほどの重症外傷を負っている」ということを意味しています。
つまり、「通常時の救急要請であっても、救命の可能性が極めて低い傷病者」ということになり、消防サービスの提供相手から外れます。
START法の「黄色」「赤色」判定
では、消防サービスの提供相手として残った傷病者の人は、全員平等な消防サービスを受けることができるのでしょうか。
上記の3パターンの傷病者を外した時点で
現場で必要な消防力 ≦ 実際の消防力
という状況であれば、答えはイエスです。
しかし、上記の3パターンの傷病者を消防サービスの提供相手から除外してもまだ
現場で必要な消防力 >>> 実際の消防力
という状況であれば、さらなるトリアージが必要です。
これから説明します。
残った人たちは、自力歩行はできないけど、呼吸はしているという状態のグループです。
観察する優先順位は次のとおり。
この優先順位に従って、観察を行います。
1,2,3、4と観察を行っていき、異常があると判断した時点で、「赤」と評価します。
つまり、1番に該当すれば、呼吸、脈拍数、意識状態を確認することもなく「赤」と評価します。
この「赤」は、もっとも消防サービスの優先度が高いグループとなります。
「生命の危機が迫っており、早急に医療機関へ搬送して処置を受けることで救命できる可能性が高い傷病者」ということを意味しています。
次は、最後のグループになります。
残ったのは、自力歩行はできないものの、呼吸、脈拍数、意識状態に異常がない傷病者。
このような傷病者を「黄」のグループと評価します。
この「黄」は「何らかの処置が必要であるものの、時間の猶予が許される傷病者」を意味しています。
START法のトリアージは有効な手法なのか?
ここまでのことで、傷病者を5つのグループに分けることができました。
グループ分けの判定基準をできるだけ客観的かつ簡単にしたものがSTART法です。
START法を行う上で最も重要なことは、可能な限り何回も繰り返して観察を行うことです。
傷病者の状態は、時間の経過とともに刻一刻と変化します。
緑色判定の傷病者が再観察で赤色判定に変わることもあります。
とても効率的な手法のように思えますが、条件によってはデメリットもあります。
というのも、通常時では最大限の消防サービスにより社会復帰できるかもしれないような傷病者が、黒色判定により、全く処置されることなく死亡する場合もあるということです。
消防力が、相対的に著しく不足する現場ならではの特徴といえます。
しかし、被害者全体で考えると、赤色判定のグループを効率的に搬送することで多くの命が助かる可能性が上がります。
総合的には、トリアージは有効であると判断できます。
トリアージの結果を示すトリアージタッグ
トリアージの結果により、4色のグループ分けが行われました。
この判定結果は4色のマーカー付きカード「トリアージタッグ」で表示されます。
さきほどのこれです。
トリアージタッグにはゴム輪がついており、引っ掛けることができるようになっています。
トリアージのルール上、傷病者の右手首に取り付けます。
取付位置が決まっていたほうが、効率的ですよね。
すぐ確認できるし。
外傷により右腕を損失している場合は左手首です。
両腕がなければ右足、左足の順です。
このカードは、不要な色の部分は簡単に切り取れるようになっています。
一番外側というか、先端にある色で状態をあらわします。
復習になりますが、
の4種類です。
日本でトリアージタッグのルールが決まったのは、阪神淡路大震災がきっかけです。
阪神淡路大震災のような大規模災害は、明らかに
現場で必要な消防力 >>>>> 実際の消防力
のようになります。
トリアージの必要性が浮き彫りになった感じです。
正式には、1996年(平成8年3月)に
などからなる「阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究会」においてトリアージタッグの標準化が検討され、「標準的トリアージタッグ」が公表されました。
【徹底解説】消防士の「救急トリアージ」についてまとめ
消防士の救急トリアージについてレポートしました。
まとめると次のとおり。
理想は、すべての傷病者が同じように消防サービスの提供を受けることです。
しかし、同時に多くの傷病者が発生してしまうと、どうしても消防力が足りなくなってしまいます。
ほんの一部の傷病者にとってはマイナスな面もありますが、トータルで考えれば、トリアージの実施は有効な手段です。
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