こんにちは、TEAM WEBRIDです。今回のテーマは消防士に与えられている7つの義務について。
7つと言っても、大きく分けて次の2種類に分類されます。
公務員である消防士は、「全体の奉仕者」と言われることがあります。そのため、一般企業とは異なった義務、いわばルールが存在します。もちろん、公務員である消防士のルールを定めているのは法律です。具体的には、地方公務員法というルールです。
今回の記事も、現役消防士や消防職員OBへの取材をもとに説明します。この記事を読むことで、消防士である以上絶対に守るべきルールが理解できます。それでは、レポートします。
職務上の義務2つ(職務遂行に関して守るべき義務)
まずは、職務上の義務について。職務上の義務として、消防士が必ず守らなければならないルールは次の2つ。
それぞれ説明します。
法令等及び上司の職務上の命令に従う義務
職務上の義務ひとつ目は、法令等及び上司の職務上の命令に従う義務です。根拠はこれ。地方公務員法第32条。
法令等及び上司の職務上の命令に従う義務(第32条)
職員は、その職務を遂行するに当って、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、かつ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
(地方公務員法第32条)
ここでいう上司とは、消防士として職務を遂行するにあたり、指揮監督する権限を有する者と定義されています。職務上の命令とは、上司から、指揮監督下にある職員に対して発せられる命令のことです。
命令の内容とは、職務の執行についてだけでなく、職務の執行に関連した合理的な範囲内で必要となものも含みます。ややこしい表現が続きましたが、具体的には次のような内容です。
など、当然の内容です。もちろん、理不尽な命令は成立しません。職務命令が有効に成立するためには、次の要件を満たしている必要があります。
職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合は、無効であるから従う必要はありません。ただし、命令が無効であるかどうかについては、客観的な判断が必要です。部下が上司の職務命令について、実質的な審査権を持つわけではありません。
また、職務命令を無効であると判断して命令に従わなかったとすれば、その判断について責任を負わなければなりません。つまり、とりあえずは従った方が無難ということです。どうしても納得がいかなかった場合は、後日、別の方法により命令の有効無効について然るべきところへ申告すべきです。
職務に専念する義務
職務上の義務2つ目は、職務に専念する義務です。根拠は地方公務員法第35条。
職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
(地方公務員法第35条)
これは説明するまでもないルールですね。仕事中は、仕事をしろよということです。後段の「当該地方公共団体がなすべき責を有する職務」というキーワードは重要です。ここでいう地方公共団体とは、消防本部を運営する市町村のことです。いくら仕事をしていると言えども、関係ない仕事ではだめだということ。つまり、仕事の定義をうたっているということです。
確かにその通りですね、勤務時間中に「仕事をした」と言い張っても、行うべき仕事ではない仕事をしていても意味がない。勤務時間中は、行うべき仕事を行う義務があるということです。
身分上の義務5つ(消防士という身分である以上守るべき義務)
次の大きな項目は、身分上の義務について。職務の内外を問わず、職員としての身分を有する限り守らなければならない義務です。身分上の義務として、消防士が守らなければならないルールは5つ。
それぞれ説明します。
信用失墜行為の禁止
消防士の信用を傷つけたり、消防職全体の不名誉となるような行為をしてはダメというルールです。
職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
(地方公務員法第33条)
具体的には
などの法令違反行為や道徳的に強い非難を受けるような非行行為を禁じるものです。消防業務の遂行に直接関係がある行為だけでなく、消防業務に直接の関係がない行為であっても、ダメ。行為自体が「その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となる」ものであれば、勤務時・勤務外に関わらず、信用失墜行為にあたります。
なお、具体的にどのような行為が信用失墜行為にあたるかを線引きするのは難しいことです。なぜなら、世間の価値観は常に変化するものだから。それぞれの行為は、社会通念上の価値観に基づいて、判断されることとなります。
秘密を守る義務
職務上知り得た秘密は、誰にも話してはいけないというルールです。これは現職中だけでなく、退職後も同様です。地方公務員法第34条第1項に記載されています。
職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。 その職を退いた後もまた、同様とする。
(地方公務員法第34条)
秘密を漏らすということは、次のような行為すべてが含まれます。
ここでいう「秘密」というのは、一般的に広く知らされていない事実のこと。さらには、その事実を一般に広く知らせてしまうことで、誰かの一定の利益を侵害してしまうような事実のことを差しています。
「職務上知り得た秘密」の定義は、職員が職務遂行上知り得た秘密のことではあるものの、自分の担当外の事項であっても、「職務上知り得た秘密」に含まれます。ただし、職務に何ら関係なく、偶然に見聞したに過ぎないものはこれに含まれません。そもそも、職務に関係ないという時点で、「職務上知り得た秘密」とは言えませんね。
政治的行為の制限
このような、政治的行為は禁止されています。根拠はこれ。
職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。
(地方公務員法第36条)
地方公務員法第36条の規定は、公務員である消防士の政治的中立性を保障することをうたっています。消防本部を運営する市町村の行政業務の公正な運営を確保することが目的です。
争議行為等の禁止
このような行為は禁止されています。根拠はこれ。
職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおつてはならない。
(地方公務員法第37条)
火事が起きて119番通報したものの、消防署がストライキで閉鎖していて”誰も119番通報に出てくれない”なんてことになると、市民の不利益ははかりしれません。当然と言えば当然のルールのように聞こえます。
しかし、実は外国の消防士はストライキが認められています。日本の消防士がストライキを認めらていない事実(団結権がない事実)は、たびたび労働者の権利が保障されていないということで世界的にも問題視されているという事実があります。
ただ、団結権がないかわりに、消防職員委員会という制度が設けられています。消防職員委員会について詳しくは、消防士ドットコム内のこちらの記事で詳しく解説しています。
営利企業への従事等の制限
任命権者の許可を受けずに、営利を目的とした私企業を営んだり、報酬を得て本来の業務以外の仕事をすることは禁止されています。根拠はこれ。
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
(地方公務員法第38条)
消防士の副業については、消防士ドットコム内のこちらの記事で詳しく説明しています。
これらの義務に違反した場合、地方公務員法第29条に基づく懲戒処分を課せられます。
営利企業等の従事制限は、身分上の義務であることから、勤務時間の内外を問わず、また休職中であっても適用があります。勤務時間の内外を問はない理由は、次の2つ。
なお、講演料や原稿料を得て講演や原稿作成を行う場合や、職員が寺院の住職の職を兼ね法要を営む際などに御布施を受けている場合、このような
のような「報酬」は労働の対価としての「報酬」とは考えられないため、任命権者の許可を必要としないと解釈されています。
消防士が守らなければならない職務上の義務2つと身分上の義務5つのまとめ
消防士である以上は絶対に守らなければならない職務上の義務2つと身分上の義務5つについてレポートしました。この合計7つのルールをまとめると次のとおり。
どのルール(義務)も公務員である消防士としては、守って当然のルールばかりですね。これらのルールを破ってしまうと、処分を受けることになってしまいます。消防士の処分についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
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