IRTとは国際消防救助隊のことです。International Rescue Team of Japanese FireServiceの頭文字をとってIRT。場合によっては頭文字を多めに取ってIRT-JFとも言います。
IRTを”アイアールティー”と読むため、愛称として“愛ある手”と呼ぶ場合もあります
この記事では、IRTをテーマにレポートします。今回も、現役消防士の方や消防職員OBの方々からの調査結果をもとにレポートします。この記事を読むことで、IRTのすべてが理解できます。
国際消防救助隊(IRT)の隊員になるには
IRTは、全国の消防士の選抜チームです。消防士になり、消防本部のIRT隊員に登録されることで国際消防救助隊になることができます。しかし、全国に722の消防本部がありますが、すべての消防本部がIRT登録隊員を抱えているわけではありません。
つまり、国際消防救助隊員になりたいという人は、国際消防救助隊の派遣に指定された消防本部の消防士になる必要があるということ。国際消防救助隊の登録がある77の消防本部は次のとおりです。
国際消防救助隊の隊員になれる消防本部:特別委託
国際消防救助隊の隊員になれる消防本部:政令市
国際消防救助隊の隊員になれる消防本部:中核市
国際消防救助隊の隊員になれる消防本部:特別委託・政令市・中核市 以外
消防本部のホームページは、次の記事にリンクがあります。
\消防局・消防本部・消防組合など消防〇〇の語尾の違いはこちらの記事/
国際消防救助隊になるには:IRT(国際消防救助隊)設立の経緯は?
昭和60年(1985年)11月14日に、コロンビア共和国において、ネバド・デル・ルイス火山が噴火しました。この噴火により、泥流災害が発生し、次のような被害が発生しました。
この大災害に伴い、外務省から総務省消防庁に対して、
もしも、コロンビア共和国の政府から援助要請があった場合、救助隊の派遣についてどうか?
との伺いがありました。総務省消防庁は、
積極的に協力する!
このような流れにより、国際派遣の準備を進めました。結果的には、コロンビア共和国の政府から、救助隊派遣要請はありませんでした。しかし、総務省消防庁は、これ以降も、国際協力の一環として、救助隊の国際派遣活動に積極的に対応する方針を掲げました。
そこで、昭和61年(1986年)に、国際消防救助隊 (International Rescue Team of Japanese FireService通称:IRT)を整備しました。同年の昭和61年(1986年)8月に、カメルーン共和国で有毒ガス噴出災害が発生しました。この時、初めて国際消防救助隊を派遣しています。
また、このような動きと並行して、政府も動きをみせています。政府は外務省を中心に、海外で大規模災害が発生した場合の国際緊急援助体制の整備を進めました。昭和62年(1987年)9月16日、JDR(国際緊急援助隊)の派遣に関する法律が公布、施行されました。
この法律が施行されてからは、IRT(国際消防救助隊)は、同法に基づくJDR(国際緊急援助隊)の救助チームの一員として派遣されることとなりました。これ以降、日本の消防が持つ高度な救助技術や能力は、海外の被災地でスムーズに発揮されるようになり、国際緊急援助に貢献しています。
国際消防救助隊になるには:IRT(国際消防救助隊)の派遣体制はどういう仕組み?
JDR(国際緊急援助隊)の派遣に関する法律に基づいた仕組みとなっています。海外における大規模災害発生時に、被災国政府から外務省への要請に応じて、日本のJDRは動き出します。総務省消防庁は、外務省からの派遣協力に関する協議に基づき、国際緊急援助活動を開始します。IRT登録隊員のいる消防本部に対し、その職員に国際緊急援助活動を行わせるよう要請を行います。
国際消防救助隊になるには:IRTの訓練はどうやって行われているの?
総務省消防庁が、全国各地において、「国際消防救助隊の連携訓練」を実施しています。この訓練は、全国の各消防本部において、あらかじめ国際消防救助隊員として登録された消防職員を集めて行うものです。令和2年では、全国で77の消防本部に、国際消防救助隊隊員(IRT隊員)が登録されています。この訓練は、海外被災地での活動において必要とされる、
などを目的としています。
国際消防救助隊になるには:IRTの今までの訓練実績は?
平成23年度に全国3会場(大阪会場、福岡会場及び東京会場)で、「国際消防救助隊の実践的訓練」を実施しています。平成24年度からは毎年、平成23年度に実施した訓練を踏まえて、「国際消防救助隊の連携訓練」を実施しています。令和元年度は、川崎市消防局と大阪市消防局で実施しています。
国際消防救助隊になるには:訓練以外にもIRTの強化は行っているの?
訓練以外にも、「国際消防救助隊セミナー」というセミナーを実施しています。このセミナーの目的は、海外災害派遣時に、国際的なルールに準拠した活動を実施するための知識、技術を共有することです。セミナーの内容は、IRT登録消防本部において、指導的な立場にある国際消防救助隊員を対象に、
などに関する研修等を中心としています。さらに、国際消防救助隊に長年携わった者を指導員として選出し、各種訓練での指導体制を整えています。また、指導員間で指導方法等を共有する場として、「国際消防救助隊指導員会議」を開催しています。
なお、日本の国際緊急援助隊救助チームは、平成22年3月に救助活動に関する国際的な能力評価(IEC)において、最高分類である「Heavy(ヘビー)」 の評価を初めて受けました。その後、平成27年3月に 更新評価(IER)を受検し、再び「Heavy(ヘビー)」 の評価を受けています。
国際消防救助隊になるには:IRTの派遣実績は?
JDR(国際緊急援助隊)の派遣に関する法律が施行されてから、IRT(国際消防救助隊)の海外災害派遣は、19回の実績があります。なお、国際緊急援助隊の派遣に関する法律施行前の2回を含めると、これまでに21回の派遣実績があることになります。このうち、直近3回の派遣実績に注目すると、次のとおりです。
国際消防救助隊(IRT)の派遣実績:平成27年4月 ネパール地震災害
平成27年4月に発生したネパール地震災害においては、国際緊急援助隊の救助チーム70人が派遣されました。70人のうち、IRT(国際消防救助隊員)は17人が派遣されました。大地震の影響により、現地空港は大混乱していました。
そのため、JDR救助チームが搭乗した航空機は、当初の予定どおり到着できませんでした。予定より1日遅れで、やっと被災地入りとなりました。しかし、現地の日本大使館及び JICA 事務所を通じて、事前に情報収集を行っていました。このことが功を奏し、これまでの派遣と比較して、 到着後、最も迅速に捜索救助活動を開始することができました。
救助チームは、旧王宮周辺、サクー、ゴンガブ地区等で要救助者の捜索救助活動を行いました。派遣期間は2週間に及びました。これは、追加派遣を行わない派遣としては、過去最長の派遣期間となりました。
国際消防救助隊(IRT)の派遣実績:平成29年9月 メキシコ地震災害
平成29年9月に発生したメキシコ地震災害においては、JDR(国際緊急援助隊)救助チーム72人が派遣されました。72人のうちIRT(国際消防救助隊員)は17人が派遣されました。メキシコ政府は国際社会に対し、一般的な支援要請は行いませんでした。
しかし、日本の災害対応における経験や知見への期待から、日本に対しては救助チームの派遣を要請しました。それだけ、世界においても、日本の救助レベルは高い位置にあると認識されているということです。IEC/Rにおける「ヘビー」評価も、もちろん影響していると考えられます。アジア圏でメキシコ政府より要請を受け、救助チームを派遣したのは、日本のみでした。
このような大きな期待を受け、救助チームは、メキシコシティの3か所(ブレターニャ、オブレゴン、トラルパン)の建物倒壊現場において、捜索救助活動を実施しました。現地でも大変好意的に受け止められています。
国際消防救助隊(IRT)の派遣実績:平成30年2月 台湾東部での地震災害
平成30年2月に発生した台湾東部での地震災害においては、台湾当局による捜索・救助活動を支援するため、JDR(国際緊急援助隊)の専門家チーム8人が派遣されました。8人のうち、IRT(国際消防救助隊員)は2人が派遣されました。余震が続く中、専門家チームは、到着直後から現地救助隊に対して、
などを実施しました。今回の専門家チーム派遣は、東日本大震災の際に台湾が行った支援に対する、日本側の“恩返し”と受け止められ、台湾で高く評価されています。
消防士|国際消防救助隊になるには|IRTがまるわかりのまとめ
IRT(国際消防救助隊)についてレポートしました。まとめると、次のとおり。
JDRと似ていますが、IRTはJDRの中の一部分のことです。間違えやすいので注意が必要です。
今後も、新しい情報が入り次第、レポートを更新していきます。
この記事を読まれた方で、さらに詳しく知りたいことがあれば追跡調査しますので、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご質問ください。
また、消防関係者の方で、それは違うんじゃない?などのご意見をいただける際も、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご連絡いただけると助かります。
コメント