こんにちは、TEAM WEBRIDです。今回のテーマは消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022です。このガイドラインとは、総務省消防庁が定めている、次のような役割のものです。
・火災時に屋内進入する消防士の安全を確保することが目的
・個人防火装備の性能基準を設ける
・個人防火装備の性能試験の方法を定める
・個人防火装備の取扱上の留意事項を示す
どうやって定まっているかというと、個人防火装備に関する国際規格(ISO規格)の内容を基本としています。そして、国際規格(ISO)にさらに、次の要素を考慮したものです。
・日本の風土
・日本の活動環境
・日本の活動内容
・日本の隊員の教育レベル
スタートは、平成23年(西暦2011年)5月に「消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン」が策定されています。その後、平成29年(西暦2017年)に「消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2017」(通称:ガイドライン2017)が策定されています。ガイドライン2017についての詳細はこちらの記事で確認してください。
このように、だいたい5年の間隔でガイドラインの見直しを行っています。2017年の次は2022年です。今回の見直しは、前回(2017年・平成29年)の見直し以降に策定された国際規格(ISO)を意識したものとなっています。必要な見直し箇所については
が検討会の構成員となってガイドラインの見直しを行っています。今回の記事も、現役消防士や消防職員OBへの取材をもとにレポートします。この記事を読むことで、ガイドライン2017からガイドライン2022への変更点などが理解できます。なお、ガイドラインでの対象となっている装備は次の5つ。
それぞれの項目について、主な変更点をレポートします。
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022での「防火帽及びしころの項目における主な変更点
防火帽及びしころの項目では、「防火帽の顎ひもの耐炎性」について改定されました。ガイドライン2017においては、耐炎性の試験対象を「顎ひもテープの取付部分」としていました。しかし、これは実情に合っていません。
なぜなら、顎ひもの取り付け部分は、防火帽に覆われており、炎にさらされることは考えられないからです。そこで、ガイドライン2022では、顎ひもの耐炎性の試験対象を「帽体から露出している部分」へと変更されました。より現実的な内容に変更されたというわけです。
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022での「防火服及び活動服」の項目における主な変更点
防火服及び活動服の項目については、大きな変更が3つ。
活動服については、前回のガイドライン2017において、指標となる規格はありませんでした。しかし、2019年に、活動服に関する国際規格「ISO21942:2019」(消防隊員用ステーションユニフォーム)が規格化されました。
このことを受け、ガイドライン2022においては、活動服の性能要件である、
などを明記することとなりました。
次に防火服について。まず、規格の見直しについては、ガイドライン2017以降に、新たな防火服に関する国際規格「ISO11613:2017」(屋外消火活動用防火服)が規格化されました。これは、ガイドライン2017に影響している防火服の国際規格「ISO11999-3:2015」より、安全性能が緩いものとなっています。
この新しい規格に定められた新たな試験方法を考慮し、防火服の規格に必要な改定を行っています。しかし、あくまでも防火服単体の場合、新たな規格のISO11613は適していません。なぜなら、高リスク状況下に適していないためです。防火服単体の場合は、新たな試験方法以外の耐熱性や耐炎性についてはISO11999の規格がガイドライン2022の内容です。
次に説明する内容は、今回のガイドライン2022最大の注目点かもしれません。防火服の構成について「防火服単体」に加えて「防火服+活動服」の組み合わせが、選択肢として追加されました。これはもちろん、先に述べた「活動服」の規格化の影響をもろに受けています。
ガイドライン2022においては、活動服に「ISO21942:2019レベル2」相当の性能を持たせることで、防火服の性能について、新たな安全性能が緩い基準「ISO11613:2017」相当の性能とすることが可能となりました。
言い換えると、外側に着る防火服の安全性能を落とす代わりに、内側の活動服の安全性能を高めようという意味です。防火服の規格が、高リスク状況下を想定していない分、2段階ある活動服の規格は、防護レベルがより高い側のレベル2となっています。
この項目の追加により、消防士の防火服はより軽量化、快適性の向上が可能となります。今後の防火服の開発次第では、防火服にかかる経費も下げることができるかもしれません。今後ガイドライン2022に対応した「防火服+活動服」の現場スタイルを導入する消防本部がどれぐらい現れるか注目したいところです。
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022での「防火手袋」の項目における主な変更点
防火手袋については、試験試料に関する項目が改定されました。ガイドライン2017においては、手袋の代表的な生地で試験実施」とされていましたが、ガイドライン2022では、「手掌部、手背部、指先により生地構成が異なる場合は、各部で試験実施」と明記されています。
実際の防火手袋を見てみると、確かに様々な生地が使用されており、従前の「代表的な」生地でしか試験を行わないのは不適切です。代表的な生地じゃないからという理由で試験を行わなかった生地が、高熱に耐えきれず溶けてしまい消防隊員が手を負傷したなんてことになるかもしれません。改定内容のとおり、生地構成が異なる場合は、それぞれの生地が使用されている各部で試験を実施すべきです。
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022での「防火靴」の項目における主な変更点
防火靴については、ガイドライン2017の中で、国際規格「ISO20344」に基づいて安全性能が記載されています。しかし、1点問題が。安全性能試験の中で、国内では試験が難しい項目がありました。それが、耐屈曲性試験の項目です。
そこで、耐屈曲性試験の項目については、国内試験機関でも実施可能なJIS試験規格(JIS K 6260)を採用することとしました。もちろん、安全性能は今までのISO規格と同等としています。これで、わざわざ国外の試験機関を利用しなければならない不都合が解消されたわけです。
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022での「防火フード」の項目における主な変更点
防火フードについては、防火フードに関する国際規格ISO11999-9の記載内容に合わせて必要な整理を行うことにとどまっています。原則、防火フードは導入していない消防本部が多いのが実情です。ガイドラインの中において、次のように記載されています。
しころを閉じた位置で固定でき、帽体、シールド等と合わせて隙間なく顔及び頸部の全面が覆われた状態にならない場合には、ISO 11999-1:2015 に規定するしころには該当しないことから、防火フードを使用する必要がある。
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022より引用
つまり、簡単にいうと、国際規格に該当するしころを使用し、防火帽及びしころの着装で全面が覆われるのであれば、防火フードは必要ないということです。
装備品以外でもガイドライン2022に追加された項目について
装備品以外でも、実はガイドライン2022に追加された項目があります。それは「SUCAM」。「SUCAM」とは、技術報告書と呼ばれ、
「SELECTION/USE/CARE AND MAINTENANCE」
の略語です。
個人防護装備の運用について、使用者の安全に関する情報が詰まったガイダンスです。そのため、消防隊員が理解し活用しやすいようにガイドライン版として編集し、ガイドライン2022に盛り込まれました。
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022の変更点まとめ
消防隊員用個人防火装備に係るガイドライン2022の変更点についてレポートしました。まとめると次のとおり。
消防本部の個人防火装備担当者は、このガイドラインを参考に装備品の調達に取りかかると思います。消防職員の安全性をしっかり高めてもらいたいですね。
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