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消防車の緊急走行|要件まとめ|資格や特例を徹底解説

警防業務

消防車や救急車の緊急走行ってかっこいいよね。
ところで、緊急走行ってどんなルールがあるの?

こんにちは、TEAM WEBRIDです。今回の記事では、信号に従わず火災現場を目指す消防車たちの緊急走行をテーマにレポートします。緊急走行は、どのようなルールに基づいて行われているのでしょうか?

今回の記事も現役消防士や、消防職員OBの方への取材をもとに解説します。この記事を読むことで、消防車や救急車の緊急走行の仕組みが理解できます。街中で緊急走行に遭遇した時など、また違った目線で緊急走行を見届けることができるようになるかもしれませんね。それではレポートします。

緊急走行ができるのは法律(道路交通法)にもとづく緊急自動車だけ

緊急自動車の定義は法律です。道路交通法第39条において、次のように定義されています。

消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう。

道路交通法39条

すごく抽象的な表現ですね。詳しくは、定義の中にあるとおり、政令(道路交通法施行令に定義されています。政令というのは、道路交通法施行令第13条1項のこと。その内容は、次のとおり。

法第39条第1項の政令で定める自動車は、次に掲げる自動車で、その自動車を使用する者の申請に基づき公安委員会が指定したもの(第1号又は第1号の2に掲げる自動車についてはその自動車を使用する者が公安委員会に届け出たもの)とする。

1. 消防機関その他の者が消防のための出動に使用する消防用自動車のうち、消防のために必要な特別の構造又は装置を有するもの

道路交通法施行令13条1項

ここでやっと、消防用自動車が出てきましたね。でも、難しく書いてあります。しかも条件がたくさん。わかりやすくすると、次の複数の条件を同時に満たす必要があります。

  • 消防機関が使用する
  • 公安委員会に届け出済みの車両
  • 消防のための出動に使用する
  • 消防のために必要な構造を有する
  • 消防のために必要な装備を有する

これらの5つの条件は、“かつ”です。確かに、消防署にある消防車はこれらの条件を満たしていますね。これぐらい条件が多くないと困ることが起きます。例えば、裕福な消防車マニアの人が消防車を買って、簡単に緊急自動車が増えてしまうと、そこら中で緊急走行する車が走り回るようになり危ない世の中になってしまいます。それなりに難しい条件にしていて当然です。

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緊急走行ができる緊急自動車に必要な構造や装備品は?

緊急自動車として認められるために必要な装備は、道路交通法施行令14条に書いてあります。次のとおりです。

道路交通法施行令13条1項に規定する緊急自動車は、緊急の用務のため運転するときは、道路運送車両法第3章(自衛隊用自動車については自衛隊法114条2項の規定による防衛大臣の定め)及びこれに基づく命令の規定により設けられるサイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない。ただし、警察用自動車がスピード違反をする車両又は路面電車を取り締まる場合において、特に必要があると認めるときは、サイレンを鳴らさなくともよい。

道路交通法施行令第14条

難しく書いていますが、必要なのは次の2点です。

  • サイレン
  • 赤色の警光灯

では、サイレンはどんなサイレンなのか、赤色の警光灯はどんな警光灯が必要なのかということになってくると、次は道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第231条」に書いてあります。次のとおり。

サイレンの音の大きさ – 前方20メートルの位置において90デシベル以上120デシベル以下であること

警光灯 – 前方300メートルの距離から点灯を確認できる赤色のもの

道路運送車両の保安基準の細目を定める告示第231条

何が言いたいかというと、それなりの音量が出るサイレンと、それなりの明るさ性能を持った警光灯の装備が必要ということです。サイレンがついていても、周囲にまったく聞こえないようなサイレンだと意味がないし、暗くて見にくい赤色の警光灯も意味がありません。

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誰でも緊急走行できるわけじゃないが資格はどうなっているの?

消防士になったからといって、誰でも緊急走行ができるわけではありません。消防本部内の機関員(運転手)の指定基準以外に、それよりも厳しい法律の壁があります。緊急自動車の運転を行なうには、

  • 大型自動車免許
  • 中型自動車免許(8t限定含む)
  • 準中型自動車免許(5t限定含む)
  • 普通自動車免許
  • 大型特殊自動車免許

のいずれかを受けていた期間が通算して2年以上必要です。根拠は道路交通法第85条第7項です。いくら免許証を持っているからといっても、一定の経験年数が経過しないと、緊急走行をしてはダメだよという主旨です。ごもっともなルールです。なお、古い情報では、3年以上との記載がありますが、間違いです。法律の改定がありました。確かに昔は「3年以上」でしたが、現在は「2年以上」です。

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緊急自動車に認められた緊急走行の特例ルール

それでは、緊急自動車の基礎知識を身につけたところで、公道上ではどのような特別ルールがあるのか確認していきます。注意してもらいたいのは、あくまでも「緊急自動車」に認められたルールです。つまり、先ほどの5点の条件下です。

  • 消防機関が使用する
  • 公安委員会に届け出済みの車両
  • 消防のための出動に使用する
  • 消防のために必要な構造を有する
  • 消防のために必要な装備を有する

根拠は道路交通法施行令第13条でしたね。この先は、緊急自動車に認められている特別ルールを説明していきます。

緊急走行の特例:右側通行の特例(道路交通法第39条第1項)

やむを得ない必要があるときは、道路の右側部分に全部又は一部をはみ出して通行することができます。やむをえない必要があるときとは、次のような場合です。

  • 右側通行をしなければ追い越しできない場合
  • 左側が渋滞して迅速な通行ができない場合
  • 道路の左右が構造的に分離されていて、左側を通行すると著しく遅延し、右側を通行すると迅速な緊急用務の遂行ができる場合
  • 道路の右側に緊急用務の対象がある場合
  • 左側に歩行者があって危険な場合
  • 左側が極端な悪路で緊急走行に不適な場合

緊急走行の特例:停止義務免除の特例(道路交通法第39条2項)

停止しなければならない場合においても、停止しないことができます。この場合においては、もちろんですが、他の交通に注意して徐行する必要はあります。ノンストップで通過できるという趣旨ではありません。強い徐行義務を含んだうえでの停止義務の免除です。緊急走行だからといって、安全運転義務は免除されません。

停止義務免除の例 
  • 信号機の信号による停止(赤信号、赤点滅、黄信号)
  • 警察官等の行う手信号(灯火)による停止
  • 歩道又は路側帯を横断する場合の直前停止
  • 踏切停止
    (ただし、警報・遮断中の踏切は入ってはならない。(特例の対象外))
  • 横断歩道、自転車横断帯横断者保護の停止
  • 一時停止標識での停止
  • 身体障害者保護、高齢者保護のための停止

緊急走行の特例:最高速度の特例(道路交通法第41条2項)

制限速度も守る必要がなくなります。では、いくらでもスピードを出しても良いのかというと、そうではありません。次のとおり、一般道路と高速道路で、それぞれ最高速度が決まっています。

✔ 一般道路(国道、都道府県道、市町村道)
80㎞毎時

✔ 高速自動車国道の本線車道(上下線が物理的に分離された部分に限る。)
100㎞毎時

ただし、非分離部分や流出入路等は、一般道と同じ80㎞毎時です。

緊急走行の特例: 座席ベルト装着義務免除の特例(道路交通法第71条の3)

緊急自動車の運転者、同乗者は、シートベルトをする必要がありません。もちろん、緊急自動車の危険性を考慮すると、装着する方が安全なのは間違いありません。しかし、消防車が緊急走行を行うときというのは、車内に乗車した消防隊員は分厚い防火服を着ています。

また、火災の状況によっては、現場到着までに車内で空気呼吸器を着装しています。シートベルトなんて装着できる状況ではありません。考えようによっては、緊急走行中の消防車が事故した場合、乗車している消防隊員の負傷具合は相当高くなる可能性があります。

緊急自動車に認められた緊急走行の特例は他にも多くある

緊急自動車に認められた特例はこれだけではありません、他にもまだあります。読めばそのままなので、項目を列挙します。

  • 通行禁止道路の通行(法第8条1項)
  • 安全地帯、立入禁止部分への進入(法第17条6項)
  • キープレフトの原則除外(法第18条)
  • バス専用(優先)通行帯の通行(法第20条の2)
  • 進路変更禁止場所での進路変更(法第26条の2第3項)
  • 追越し禁止場所での追越し(法第30条)
  • 指定通行区分に従わない通行(法第35条1項)
  • 横断歩道及びその30m以内の追抜き(法第38条3項)
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緊急走行する緊急自動車に認められていそうで認められていない特例

緊急自動車なら認められていそうなものの、意外と認めらていない交通ルールを紹介します。

  • 歩行者用道路では歩行者に注意し徐行しなければならない。(法9条)
  • 歩道通行の禁止(法17条1項)
  • 軌道敷内通行の禁止(法21条1項)
  • 急ブレーキの禁止(法24条)
  • 車間距離の保持(法26条)
  • 左側追越しの禁止(法28条1項)
  • 割込みの禁止(法32条)
  • 横断歩道のない交差点でも横断している歩行者を保護しなければならない。(法38条の2)
  • 徐行すべき場所での徐行(法42条)
  • 合図すべき場所での合図、不要な合図の禁止(法53条1・2項、同3項)
  • 警音器鳴らせの標識設置場所での警音器吹鳴(法54条1項)
  • 事故を起こした場合の停止(法72条)

【事故時の対応】

継続運転の必要がある場合、直ちに停止し、他の乗務員に負傷者の救護、危険防止の措置、警察官への報告をすれば、運転を継続することは特例として認められます。
つまり、事故時に停止しなければ、緊急自動車でも違反になります。

緊急走行情報番外編1:緊急走行中でも高速道路料金を支払うの?

緊急走行中は、高速道路料金を払いません。高速道路のインターチェンジ出口で、止まって高速道路料金を支払うなんて、せっかくの緊急走行で急いでいるのに台なしです。根拠は、道路整備特別措置法第24条第1項ただし書きです。業務中の緊急自動車は、高速道路などの通行料金徴収の対象となりません。

第二十四条 料金は、高速自動車国道又は自動車専用道路にあつては当該道路を通行する道路法第二条第三項に規定する自動車(以下「自動車」という。)から、その他の道路にあつては当該道路を通行し、又は利用する車両から徴収する。ただし、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)第三十九条第一項に規定する緊急自動車その他政令で定める車両については、この限りでない。

道路整備特別措置法第24条第1項ただし書き(料金徴収の対象等)

緊急走行情報番外編2:消火活動中の路上駐車は駐車違反にはならないの?

道路交通法で緊急自動車とはあくまで「運転中のもの」と定義されています。つまり、駐車している状態は、緊急自動車の要件は満たしません。しかし、火災出動した際に、

消火活動に適した場所に消火栓があるのに、路上駐車になるからここには消防車を駐車できないな!

なんてことになれば、助かる命も助かりません。このため、各都道府県では条例により、駐車禁止の除外を定めています。その条件は次のとおり。

刑事捜査や交通取締り、消防活動、水防活動、人命救助、公共インフラに関わる緊急の活動をしている。

公安委員会規則

これを根拠に、駐車禁止から除外しています。ここで、「緊急自動車だから駐車禁止から除外する」としていないことがポイントです。ここまで読んできた人ならわかりますよね。そうです、緊急自動車の5つのポイントのうちのひとつを思い出してください。「運転中のもの」が緊急自動車です。“消防活動、水防活動、人命救助に関わる緊急の活動をしている場合”が駐車禁止から除外されています。

つまり、駐車中は、緊急自動車の定義に合わすため、サイレンを鳴らし続ける必要も、赤色の警光灯を点灯させておく必要はありません。駐車禁止場所であっても、“消防活動、水防活動、人命救助に関わる緊急の活動をしている場合”であれば、サイレンを鳴らしていなくても、赤色の警光灯を転倒させていなくても、違反にはなりません。

消防車の緊急走行|要件まとめ|資格や特例を徹底解説のまとめ

消防車などの緊急走行についてレポートしました。まとめると次のとおり。

  • 緊急自動車の定義は法律に書いてあり、5つの条件を満たす必要がある。
  • 免許取得後、2年経過しないと緊急走行はできない
  • シートベルトはしなくてもいい
  • 一般道は80km/時、高速は100km/時まで
  • 緊急自動車に認められた特例はたくさんある
  • 認められていそうで認められていないルールもたくさんある
  • 高速道路はタダ
  • 路上駐車も違反にならない

というものでした。消防士たちが、どのような交通ルールの元で緊急走行を行っているのか、よく理解できたのではないでしょうか。緊急走行中はシートベルトが物理的に装着できないため、危険度が高くなっています。つまり、消防士たちは出動するだけで危険にさらされているということになります。不要な119番は控えましょう。

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