今回の記事は、消防職員委員会という、ふだん聞きなれない、消防士の世界には当たり前にある制度についてレポートします。
委員会というだけあって、何人かが集まって何かを決めているのでしょうか?
今回の記事も、現役消防士の方や消防職員OBの方々からの調査結果をもとにレポートしたいと思います。
今回の記事を読むことで、この謎の制度が何なのか、すっきりと理解できます。
- 消防士には労働組合がない
- 消防職員委員会とはどんな制度?
- 消防職員委員会って何をするの?
- 消防職員委員会って誰が委員になるの?
- 消防職員委員会では何を決めるの?
- 消防職員委員会の後は何が起きるの?
- 消防職員委員会っていつ実施するの?
- 消防職員委員会にはどんな意見が出てくるの?
- 団塊の世代の退職により消防学校入校教育、救急救命士研修、病院実習等のため人員不足が生じることから、人員増を図る
- 出動した際には、消火作業の有無にかかわらず、火災出動手当を支給する
- 指揮者が明確に識別できるように、現在の識別用腕章からベストに仕様変更する
- 老朽化の激しい庁舎の建て替えについて、今後の予定、計画を具体的に示して欲しい
- 多種多様な救急事案が増加傾向のなか、救急隊の身の安全を守るために救急車に防刃チョッキの配備を要望する
- 現状のベルトは、現場で活動中に外れやすいため、現場でベルトが外れないようベルトの仕様変更を要望する
- 携帯無線の数が少ないので、各個人に携帯無線が装備できるよう要望する
- 現状のホース塔は、人手によって搬送し、窓から身を乗り出しホースを干す状況であり、危険を伴うためホース塔の新設を要望する
- 【消防職員委員会】消防士の労働組合?制度の仕組みや中身を徹底解説のまとめ
消防士には労働組合がない
消防士には団結権がありません。
なぜかというと、消防士には、常に、厳正な規律と、統制のある現場活動が求められています。
火事だー、119番しろー!
ずっと119番を鳴らしているのにつながらない!
あー!今日は消防署がストライキの日で空っぽだ、消防車は来ない!
このようなことが、絶対あってはならないのが消防士という職業です。
そのため、消防士には団結権が認められていません。
したがって、労働組合もありません。
ということは、劣悪な勤務環境が発生していても、消防職員委員会という制度がないと、改善する方法がありません。
消防職員委員会とはどんな制度?
平成8年に、消防組織法の中に、団結権がない代わりに、消防士たちの思いを組織に届ける制度として、創設されたのが消防職員委員会です。
制度の仕組みは、次のとおりです。
このような制度があることにより、消防士たちのやる気を高め、消防本部をより良い組織へと改善することを目的としています。
消防職員委員会って何をするの?
消防士たちから、次のような意見を集めて検討します。
具体的に見てみます。
消防士の勤務条件
消防士の被服や装備品
消防活動のための設備や機械
など、3つの項目に該当するものはすべて、検討意見の対象です。
あくまでも、現役消防士に影響する内容であって、消防士の採用試験などに関することは対象外です。
消防士の採用試験についてはこちら
消防職員委員会って誰が委員になるの?
消防士の中から、
と決まっています。
わかりやすくするため、次の例をあげます。
消防本部に5つの課があり、管轄に5つの消防署がある中核市規模の消防組織があったとします。
5つの課と、5つの署なので、合計10か所の所属に分かれています。
10か所の所属それぞれから、
の計2名が委員になります。
つまり、1所属から2名、それが10所属で、合計20名。
この20名が委員となって、意見の検討を行う仕組みです。
消防職員委員会では何を決めるの?
消防職員委員会の場では、それぞれの意見に対して、次の4つの答えを決めます。
提出された意見について、提案所属の委員が提案理由を話します。
その意見について、委員たちが議論をします。
ある程度、話が落ち着いたら、4つの答えについて委員の多数決を取ります。
消防職員委員会の後は何が起きるの?
消防職員委員会の事務局は、本部の総務課が担っています。
事務局は、提出された意見とそれぞれの検討結果を、消防長に提出します。
消防長は、提出された意見と、委員会の検討結果を考慮し、消防長による「処置」を決めます。
消防長の処置は、次の4つです。
委員会の検討結果と同じ内容です。
ここから先は、「実施が適当」と消防長が判断した意見について、意見実現のために関係する部署が動き出します。
これが、消防職員委員会の一連の流れです。
意見として、組織に提出した意見が実現に向かう、まさしく労働組合の意味合いを持っています。
消防職員委員会っていつ実施するの?
消防職員委員会は、毎年度前半に1回開催するように消防庁の告示で決まっています。
消防職員委員会にはどんな意見が出てくるの?
過去にあった意見を見てみます。
一般市民からすると、わかりにくい意見もあるため、解説をつけます。
団塊の世代の退職により消防学校入校教育、救急救命士研修、病院実習等のため人員不足が生じることから、人員増を図る
消防署の仕事は、1日に勤務する必要がある「最低確保人員」というものが決まっています。
「最低確保人員」についてはこちらの記事で説明しています
したがって、意見の中にあるような長期出張に人手がとられてしまうと、最低確保人員が確保できにくくなるため、このような意見が出ています。
出動した際には、消火作業の有無にかかわらず、火災出動手当を支給する
手当の支給条件というのは、消防本部によって多少の違いがあります。
理由は、手当については、各市町村の条例で定められています。
消防本部は各市町村が運営しています。
つまり、消防本部ごとで、手当支給のルールが違うということです。
この消防本部の場合、火災出動をしても、消火作業をしないと火災出動手当がつかないようです。
消火作業をしない出動とは、例えば、
などです。
緊急走行は危険が伴うため、消火作業をしなくても、手当は支給してほしいという意見です。
指揮者が明確に識別できるように、現在の識別用腕章からベストに仕様変更する
指揮者とは、隊長のことです。
腕章に、小隊長、中隊長などの記載があっても、角度によっては見にくくなります。
また、腕章よりベストのほうが大きな文字となり見やすくできます。
改善のための意見です。
老朽化の激しい庁舎の建て替えについて、今後の予定、計画を具体的に示して欲しい
消防本部内の風通しを良くするための意見です。
施設担当の部署は、庁舎の更新計画を把握していても、末端の職員は知るすべがありません。
情報を共有してほしいという意見です。
多種多様な救急事案が増加傾向のなか、救急隊の身の安全を守るために救急車に防刃チョッキの配備を要望する
現時点では配備されていない装備を、新しく配備してほしいという意見です。
現状のベルトは、現場で活動中に外れやすいため、現場でベルトが外れないようベルトの仕様変更を要望する
現時点で配備されている装備品の不具合を改善しようという提案意見です。
携帯無線の数が少ないので、各個人に携帯無線が装備できるよう要望する
現時点で配備されている装備品の数を増やすための意見です。
現状のホース塔は、人手によって搬送し、窓から身を乗り出しホースを干す状況であり、危険を伴うためホース塔の新設を要望する
現状施設の問題点に対し、改善を提案する意見です。
【消防職員委員会】消防士の労働組合?制度の仕組みや中身を徹底解説のまとめ
今回は、消防士の世界にある、労働組合のような制度、消防職員委員会について、制度の概要や流れ、具体例などを解説しました。
確かに、消防署にストライキをされたら大変ですよね。
消防士たちには、この制度をしっかり利用してもらって、現場活動に全力で取りかかれるよう職場環境を改善してほしいと思います。
今後も、新しい情報が入り次第、レポートを更新していきます。
この記事を読まれた方で、さらに詳しく知りたいことがあれば追跡調査しますので、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご質問ください。
また、消防関係者の方で、うちの本部ではこうなってるよ、それは違うんじゃない?などのご意見をいただける際も、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご連絡いただけると助かります。
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