今回の記事では、消防士とLGBTの関係についてレポートしたいと思います。
みなさんは、「LGBT」をご存知でしょうか?
まずは、LGBTの説明から入り、消防士の世界でのLGBTについて触れていきたいと思います。
この記事を読むことで、消防士の世界とLGBTの関係が明確にわかります。
消防士とLGBT:そもそもLGBTって何?
LGBTとは、
- Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)
- Gay(ゲイ、男性同性愛者)
- Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)
- Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)
の頭文字をとった言葉で、セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)の総称のひとつです。
簡単に言い換えると、
- Lesbian(女性のことを好きになる女性のこと)
- Gay(男性のことを好きになる男性のこと)
- Bisexual(男性も女性もどちらでも好きになる人のこと)
- Transgender(身体的に男性だが、精神的には女性)
- Transgender(身体的に女性だが、精神的には男性)
ということになります。
レインボーカラーを、イメージカラーとしているのも特徴です。
消防士とLGBT:消防士の中のLGBT
消防士にも、もちろんLGBTは存在します。
日本人の13人に1人は、LGBTが存在すると言われています。
LGBTを理由に、採用試験を不合格にしたなんてことになれば、今の時代、組織としてマスコミやSNS等でたたかれることは間違いありません。
そもそも、消防士採用試験の募集要項にも、「LGBTでないこと。」などの条件もありません。
面接試験において、
あなたは男性の受験生として申し込んでいますが、見た目は女性です、トランスジェンダーですか?
「あなたは女性の受験生として申し込んでいますが、見た目は男性です、トランスジェンダーですか?」
等の質問を面接官がしてしまったら、性的差別を助長する発言ととられても仕方ありません。
公務員の採用試験においては、公平、平等な採用判断を行う必要があるため、差別的発言は必ず禁止事項とされています。
\消防士採用試験について詳しく知りたい方はこちらの記事/
消防士とLGBT:LGBTが消防士になるには?
LGBTの人だからといって、消防士への就職方法は何も変わりません。
受験願書を希望する消防本部に提出し、採用試験に合格するのみです。
ただ、願書の記入においては、性別欄を記入する必要があります。
男女の差によって、合否に影響が出るわけではありませんが、体力試験の内容が異なってくることがあるので、性別欄の記入は必要不可欠となっています。
レズ、ゲイ、バイセクシャル
レズ、ゲイ、バイセクシャルの人などは、何も困ることはありません。
戸籍上の性別を記入するだけです。
好きになる相手の性別が何であろと、採用試験の合否には関係ありません。
トランスジェンダー
トランスジェンダーの人にとっては、望まない性別を記入することにストレスを感じるかもしれませんが、虚偽の申し込みをすると、合格した後で合格取り消しになる可能性もあるので、必ず戸籍上の性別を記入することになります。
先に、戸籍上の性別を記入するとは言ったものの、受験生の中には、性転換手術を部分的に実施済みであったりして、判断に悩む人もいると思います。
受験願書を受け取る側の消防本部としては、何かを根拠に性別を判断するしかないので、あくまでも戸籍上の性別を重視します。
もちろん、上半身も下半身も性転換手術を実施済みであり、戸籍も変更済みなのであれば、変更後の性別を選ぶという判断で間違いありません。
身体的にも、精神的にも、戸籍上も同一の性別なのであれば、生まれた時の戸籍上の性別と違っていても、問題はありません。
消防本部側が、
あなたは生まれた時は男性だから、いくら性転換手術をして戸籍も女性に変えたからといって、女性として採用試験に申し込んだらだめだよ。
なんて言おうものなら、ネットやマスコミで大きく叩かれるであろうことは、想像の範囲内です。
消防士とLGBT:採用試験合格後、カミングアウトのタイミングは?
レズ、ゲイ、バイセクシャル
特に、カミングアウトをする必要はないと思います。
理由は、LGBTであること、そうでないことが業務への影響がないからです。
消防士には、男性も女性もいます。
男性を好きになる女性や、女性を好きになる男性が組織内にいるのは当たり前です。
誰かが誰かを好きになるということが消防業務に差し支えるということになれば、そもそも消防士の世界が成り立ちません。
トランスジェンダー
本人の気持ちにより、カミングアウトすべきかどうかの判断が分かれます。
本人の意に反した側の性別で、周囲から扱われることが、我慢できるのかそうでないのか。
もしも、我慢できないほどのストレスなのであれば、カミングアウトすべきです。
トランスジェンダーだからといって、懲戒処分や分限処分になる基準は一切ありません。
最初にカミングアウトが必要になるタイミングがあります。
それは、消防被服等の採寸の時です。
採用試験に合格すると、4月の採用開始までに、「採用前健康診断」と、4月1日から自分に合ったサイズの活動服や制服を着ることができるように、「採寸」があります。
この時までには、消防本部に対して、カミングアウトすると判断した人は「自分の見た目は男性ですが、精神は女性です、男性の服装は着たくない、女性用の制服を着たい。」と伝えるべきです。
ただ、消防士の世界、男性と女性の被服の違いはほとんどありません。
- 制服の上着の合わせが男女で異なる
- 女性の制服は、キュロットタイプのスカートがあるが、男性同様の長ズボンもある
- 制服時に着用する制帽は男性用女性用で形が異なる
- 女性には、制服時用バッグを支給する本部もある
- 制服時の靴が、紳士靴とパンプスの違いがある
といった感じで、制服を着用した時ぐらいしか違いがありません。
消防本部の毎日勤務に異動にならない限りは、一般の消防士が制服を着る機会はなかなかありません。
活動服やアポロキャップなどは、男女共通のものがほとんどです。
そのため、 周囲にカミングアウトを行うこと自体が相当のストレスである場合は、カミングアウトをしないままでいる選択肢も悪いことではありません。
消防士とLGBT:LGBTが消防士になって困ること
レズ、ゲイ、バイセクシャル
男性が多い職場のため、男性のことを好きになる男性の場合は、職場内に好きな男性ができた時などは恋煩い(こいわずらい)に悩むでしょう。
消防士は、一般男性よりも比較的にかっこいい男性が多いことも事実です。
そうなってくると、好きになってしまうことも十分考えられます。
消防士の同じ職場の中だけで、同じゲイ同士の人が恋人になるということは非常に稀なことであり、叶わぬ恋によるストレスは大きいものと考えられます。
また、なんといっても体育会系の職場だけに、周囲からからかわれたり、俗に言う、いじられたりすることは覚悟が必要です。
ただ、体育会系のいじりというのは、LGBTに限ったことだけではなく、どのようなことでも、いじり、いじられ、笑いにされることはあることなので、本気で悩むようなことではありません。
また、過度のからかいは「ハラスメント」になる可能性も高く、不祥事に敏感な公務員の世界ではいき過ぎた「からかい」は周囲から批判の対象になるため、一般会社よりはいじめ等につながりにくい状況です。
そのような中で、行き過ぎた行為は、消防士の不祥事として時折ニュースを騒がすことになっています。
トランスジェンダー
この場合は、最初にして最大の難関、消防学校の寮生活がトランスジェンダーにとっては大きなストレスに感じることでしょう。
全寮制の生活は、異性、同性の他人と衣食住を共にするため、カミングアウトなしでの生活はかなりのストレスになります。
その時の体の状態、上半身の手術のありなし、下半身の手術のありなしをよく考え、次のような内容を、消防本部の人事担当者に聞いてもらい、消防学校入校までには、消防学校のスタッフと調整してもらっておくことが賢明です。
- 使用するトイレ
- 使用するお風呂
- お風呂に入るタイミング
- 洗濯物を洗うために使う洗濯機の使用
- 寮の部屋は男性部屋?女性部屋?個室?
では、消防学校を卒業し、消防署での勤務が始まった後はどうでしょうか。
消防署での勤務というのは、消防学校での生活とあまり変わりはなく、トイレ、お風呂、更衣室、仮眠室の利用などは、それぞれの建物事情に合わせて、消防署ごとで対応をすることになります。
トイレなどは、消防署においても、男性用、女性用、多目的トイレと整ってきており、利用に困ることは少ないと思います。
多目的トイレというのは、職員ではなく、消防署を訪れた一般市民の利用を主目的としている施設のため、予算が付きやすい傾向にあります。
逆に、職員のための施設というのは、予算が付きにくいものとなります。
したがって、職員のLGBT対策としての更衣室やお風呂の施設改修は、どこの消防署も対応ができていないことがほとんどです。
また、一言に消防署といっても、建物ごとで作りはさまざまであり、LGBT職員のための統一的な施設利用というのは難しいものがあります。
次のような対策を行っている消防本部があるようです。
トイレ
一般市民が利用する可能性のあるトイレ以外のトイレを利用する。
理由:見た目から判断できる性別と異なるトイレから職員が出てきた際などに、一般市民が誤解をする可能性があるため
風呂
利用時間を時間帯ごとで制限し、LGBTの人の個人利用できる環境を作る。
更衣室、仮眠室
施設の利用状況から個室利用が可能ならば、個室利用を認めたりと、その建物の施設に合った利用環境を作る。
\消防士採用試験について詳しく知りたい方はこちらの記事/
【応援】LGBTとは?消防士にもいるよ!ストレスや弊害を徹底解説のまとめ
今回は、消防士とLGBTの関係についてレポートしてみました。
LGBTの中でも、トランスジェンダーの人は、消防士になることで周囲の配慮が必要になってくることがわかりました。
しかし、LGBTだからといって、消防行政のサービスが低下するということは一切ありません。
TEAM WEBRIDとしても、少数派であるLGBTである消防士の方々を応援したいと思います。
今後も、新しい情報が入り次第、レポートを更新していきます。
この記事を読まれた方で、さらに詳しく知りたいことがあれば追跡調査しますので、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご質問ください。
また、消防関係者の方で、うちの本部ではこうなってるよ、それは違うんじゃない?などのご意見をいただける際も、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご連絡いただけると助かります。
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