消防士の世界の未来は、この先どんな風に変わっていくの?
消防士の世界にもAIが取り入れらていくの?
こんにちは、TEAM WEBRIDです。
世間ではAI技術の進歩が著しいですが、Society5.0時代の到来で消防の世界には影響があるのでしょうか?
今回の記事では、消防の世界とAI技術の融合をテーマにレポートしたいと思います。
この記事を読むことで、これからの消防の世界にどのようにAI技術が融合され、消防活動方針や安全管理対策がどのような方向に進んでいくかが理解できます。
今回も、現役消防士や消防職員OBへの取材をもとにレポートします。
そもそもSociety5.0とは?先におさらい
Society5.0時代とは、
を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことです。
聞きなれない言葉なので、違和感があるかもしれません。
しかし、こういった言葉は聞いたことがありませんか?
なんとなく聞いたことがあると思います。
そうです、社会の状況ですよね。
原始時代、人は狩りをして生活していました。
その後、稲作などが始まり農耕社会へ。
次第に産業革命が起き工業社会へ。
そして近年のインターネットの普及による情報社会。
つまり、
と時代は流れてきたわけです。
この流れに続く、新たな社会を指すものがSociety5.0時代です。
第5期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。
Society 5.0で実現する社会
これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野ごとの情報の横のつながりが不十分であるという問題がありました。
人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が大きな負担でした。
また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題があり、十分な情報の共有は困難でした。
Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながります。
様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出し、これらの課題や困難を克服しようとするものです。
また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。
社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、
を実現しようとするものです。
Society 5.0のしくみ
先ほどふれたように、
を高度に融合させたシステムによりSociety 5.0の世界を実現します。
これまでの情報社会(Society 4.0)では、人間の手でサイバー空間に存在するクラウドサービス(データベース)にインターネットを経由してアクセスして、情報やデータを入手し、分析を行ってきました。
Society 5.0では、フィジカル空間のセンサーから、膨大な情報がサイバー空間に集積されます。
サイバー空間では、このビッグデータを人工知能(AI)が解析し、その解析結果がフィジカル空間の人間に様々な形でフィードバックされます。
今までの情報社会では、人間が情報を解析することで価値が生まれてきました。
Society 5.0では、膨大なビッグデータを人間の能力を超えたAIが解析し、その結果がロボットなどを通して人間にフィードバックされます。
データの分析、解析、フィードバック作業を、人間よりも優秀な人工知能(AI)が担うことで、これまでには出来なかった新たな価値が、産業や社会にもたらされることになります。
消防の防災技術分野が向かう研究開発の方向性
総務省消防庁は、消防防災技術の研究開発を、計画を立てて実施しています。
その名も、
約5年ごとに、計画の見直しを行っています。
平成30年(2018年)3月に見直しを行った「消防防災科学技術高度化戦略プラン2018」では、次の3点を主な柱としています。
日本全体の動き、統合イノベーション戦略等を踏まえた対応
消防に限らず、日本全体の科学技術政策の計画として、「科学技術基本計画」があります。
この計画は、政府が決める科学技術のイノベーション(技術革新)に向けた総合戦略です。
毎年策定されています。
直近では、令和元年6月21日に「統合イノベーション戦略2019」が閣議決定されています。
この戦略においては、Society 5.0 の実現を目指すため、次の2点を推進しています。
また、総務省においても、「Society 5.0 時代の地方」をキーワードとして
を全国の自治体に共有する取組を実施しています。
日本全体の動きに合わせ、消防もSociety 5.0 の実現を目指す!
総務省消防庁では、このような動きを踏まえ、消防に関係する課題の解決や重要施策推進のため「消防防災科学技術研究推進制度」を使って、AI やロボット等に関連した案件を重点的に研究し、社会実装化を推進しています。
また、消防研究センターにおいても、多様化・大規模化する火災や自然災害に対応して、火災予防や消火・救助活動等の向上を目的に研究・開発を実施しています。
それでは、現在、総務省消防庁において取り組んでいるAI やロボット等を利用したシステム等に関する研究開発の事例について紹介します。
消防ロボットシステム(スクラムフォース)の配備
目的及び概要
今後発生が懸念されている大災害に、
があります。
この2つの大災害の被害想定地域には、日本有数のエネルギー・産業基盤が集積しています。
特に、石油コンビナートにおいて特殊な災害が発生した場合、消防隊が現場に近づけないといった大きな課題があります。
そこで、現場に近づけない消防隊の代わりに活動するのが消防ロボットです。
耐熱性が高く、
を行うAI 技術を活用した消防ロボットシステムの研究を平成26年度から進めています。
消防ロボットシステムは、消防隊員による操縦の必要がありません。
システムが複数提案する、
の判断及び指示を入力するだけで、半自律的に消火活動を行ってくれます。
半自律的:自律というのは自らが判断して行動すること
一部を消防隊員が判断し、指示することを半自律としています
消防ロボットシステムの活動イメージは次のとおりです。
“引用 総務省消防庁HP”
災害現場から十分離れた安全な位置から、消防隊員が指示を入力します。
その指示を受けた消防ロボットシステムが活動します。
具体的には、空中や地上から偵察・監視するロボットの情報を基に、放水砲ロボットの最適な放水位置を導きだし、放水砲ロボットとホース延長ロボットがそれぞれの活動を行うものです。
消防ロボットシステムによる消防活動を効率的に実施するために、次のような高度な技術を活用しています。
大規模災害に対応するために複数のロボットが協調連携して活動します。
一方で、システムの一部のロボット、例えば偵察・監視ロボットだけでも機能することも考慮し、研究開発を進めてきました。
消防ロボットシステムの研究開発では、まず、各単体のロボットの試作機を完成させました。
次に、試作したロボットに協調連携や自律化といった高度な機能を取り込みました。
そして、とうとう平成30年度に、実戦配備可能な消防ロボットシステムが完成しました。
実戦配備型の完成
飛行型偵察・監視ロボットは、プロペラが上下に2つ重なり、逆向き方向に回転する「二重反転機構」を採用しています。
この機構により、テールローターを必要とせず、小型化が可能になっています。
また、プロペラが吹き下ろす気流は、ロボット本体の冷却にも効果的に利用できています。
走行型偵察・監視ロボット
走行型偵察・監視ロボットは、飛散物が散乱した状況での走行も想定し、車輪、クローラー(履帯りたい)の2つの走行機構を備えています。
クローラーは、悪路や障害物に対する走破性能は高いものの、移動速度が遅く、自律走行精度が低いという問題点があります。
そこで、障害物等が検出されない範囲では、車輪で走行する仕組みになっています。
放水砲ロボット、ホース延長ロボット
放水砲ロボット、ホース延長ロボットは、サスペンション機構を備えた4輪駆動です。
農業用機械を応用し、地盤の液状化が発生した場所等においても走行が可能です。
放水砲ロボットに装備されているノズルは、新たに開発したものです。
広角噴霧放水、ストレート放水、泡放射をノズルの形状切り替えだけで実現できます。
泡放射は、放水軌跡の安定性と、泡による消火性能を両立できる方式を採用しています。
消防隊が所有する最大級のポンプで送水可能な放水量4,000 L/min、放水圧1.0 MPa に対応したノズルとなっています。
各ロボットは自律的に動作するものの、最終的な判断は消防隊員が指令します。
先ほど使った表現、半自律的です。
指令を各ロボットへ、統合的に伝達する指令システムは、搬送車両に設置されています。
搬送車がオペレーションルームみたいでカッコイイですね。
ちなみに、消防ロボットシステムは1台の搬送車両に収納して、現場へ搬送するようになっています。
これらのシステムは、研究開発の実施にあたり、
で構成される外部評価会を設置し、評価会における意見も反映させつつ、研究開発を行ってきたものです。
部隊発足と実証配備
平成30年度末に完成した消防ロボットシステムは、千葉県にある市原市消防局に緊急消防援助隊車両として配備されました。
緊急消防援助隊について詳しく知りたい方はこちらの記事
千葉県市原市は、訓練期間を経て、令和元年5月24日、当該ロボットシステムを装備した特殊装備小隊を発足させました。
この部隊発足式に合わせ、
と命名しました。
合わせて、スクラムフォースのロゴ・マークも発表しました。
今後、緊急消防援助隊として、全国の大規模災害に出動します。
迅速な救急搬送を目指した救急隊運用最適化の研究開発
救急自動車による現場到着所要時間は、平成の終わりで全国平均8.7 分です。
早いと感じるか、遅いと感じるかは個人によって異なると思われます。
また、病院収容所要時間は、平成の終わりで全国平均39.5 分です。
救急出動件数の増加とともに、救急活動時間は増加傾向にあります。
この課題に対して、これまで#7119 などの様々な対策を行ってきました。
#7119について詳しく知りたい方はこちらの記事
現場到着所要時間を短縮するための新しい取組として、AI を活用して救急隊の効率的な運用を行う手法の研究開発を行っています。
この手法は、消防本部で既に所有している救急活動データ、
の関係性を分析するというものです。
分析結果から、救急需要が多く見込まれる地域をリアルタイムに予測し、事前に救急隊を移動配置させるというものです。
予測出動とでもいうべきものでしょうか。
予測出動により、救急出動の効率化を図り、現場到着時間を短縮することを目指しています。
これまでには、愛知県の名古屋市消防局が研究開発に協力しています。
名古屋市消防局の過去9年間の救急活動データ(約100 万件分)を分析して、救急需要を予測するプログラムのプロトタイプを開発しています。
さらに、このプログラムについて実証実験を行い、予測出動の効果や画面表示の視認性の検証を行っています。
【救急需要のメッシュ予測】
色の濃いメッシュは、救急需要が多いと予測したところ
また、救急隊の最適配置では、救急隊に特化した最適配置モデルを検討し、その現場到着時間短縮効果の検証を行っているところです。
今後の研究方針としては、実用化に向けての実証実験を進め、令和2年度の完成を目指しています。
消防防災活動におけるドローンの活用
概要
消防研究センターでは、めざましく進歩しているドローンを消防の活動に役立てる研究を行っています。
特に土砂災害の現場では、捜索範囲の絞り込みや危険性の把握のために、全体の状況把握が重要です。
しかし、土砂災害の現場というのは、道路の土砂や倒木等により移動の障害が多く、全体の状況把握は困難です。
そのため、航空写真やヘリコプターからの偵察に加え、ドローンの活用がとても有効です。
ドローンの活動事例:北海道胆振東部地震での技術支援
平成30 年9月6日、北海道胆振東部地震の土砂災害により、行方不明者が発生しました。
消防研究センターは、平成30 年9月7日から11日までの5日間、捜索救助活動現場において、二次災害危険の評価と、回避方策に係る技術的助言を行いました。
総務省消防庁は、名古屋市消防航空隊の協力を得て、胆振東部消防組合消防本部に7日7時に到着しました。
その時点で、捜索救助活動が行われていた4つの現場について、現地調査及びドローンによる上空偵察を行いました。
調査及び偵察の結果を踏まえて、
について検討しました。
検討結果は、現地で活動中の緊急消防援助隊及び北海道内応援隊の指揮隊へ伝達しました。
また、同じ現場で活動中の警察及び自衛隊各隊へも伝達しました。
今後の課題
ドローンによる全体状況把握は、事例の土砂災害の規模では、有効であることが明らかになりました。
しかし、現場だけを見ていると、現場周辺の二次的な土砂移動に対する備えが不十分になることも明らかになりました。
また、より詳細に危険性を評価するためには、対象の大きさや斜面の傾斜などの定量的な情報が必要です。
今後は、レーザーレーダーを用いた被災後の3Dデータの収得技術の確立が、新たな課題と考えられています。
「防災支援システム(仮称)」とは?大規模な防火対象物における防火安全対策の研究開発
「防災支援システム(仮称)」というのは、次で説明する「G 空間自衛消防支援システム」と「現場活動支援システム」を合わせたものです。
「防災支援システム(仮称)」の研究は、令和元年度から2か年計画で、
の協力のもと進められている研究です。
目的は、大規模な防火対象物の火災時に、G 空間情報やICT を活用し、
の屋内測位情報を防災センター等で把握するものです。
さらに、スマートマスク(地図情報や赤外線画像等を表示できる面体)やタブレットにより、現場の消防隊員と情報共有し、消防活動を行うためのシステムです。
システム概要図は次のとおりです。
“引用 総務省消防庁HP”
それぞれの詳細を説明します。
「G 空間自衛消防支援システム」の構築
「G 空間自衛消防支援システム」というのは、自衛消防活動を支援するシステムです。
一定規模以上の大きな建物には、
の設置が義務付けられています。
災害が発生すると、
などの情報が防災センターに集約されます。
この際に、人間の所在位置を屋内測位機能により把握しようとするものです。
そして、スマートフォンやタブレットを使って、人間の所在位置情報を、事業所の自衛消防隊と防災センター間で共有します。
どこに誰がいるのかがわかれば、自衛消防隊の活動が非常にスムーズになることは明白です。
災害発生場所から近い位置にいる自衛消防隊員の検知や、逃げ遅れ者の所在の検知、的確な初動対応の指示などを通じて、自衛消防隊の活動をより効果的なものとすることができます。
「G 空間自衛消防支援システム」は、自衛消防活動を支援する機能として役立ちます。
「現場活動支援システム」の開発
「現場活動支援システム」は、公設の消防隊員を支援するシステムです。
「現場活動支援システム」は、空気呼吸器用マスクに赤外線カメラやディスプレイ機能を持たせます。
このような多機能な空気呼吸器のマスクをスマートマスクと表現します。
このスマートマスクに、さらに通信機能を持たせます。
そうすると、タブレット等を介し、現場の消防隊員と後方の指揮者(隊長)間で情報の共有を行うことができるようになります。
また、先ほどの自衛消防隊員のための「G 空間自衛消防支援システム」と、この消防隊員のための「現場活動支援システム」間で連携を図るとどうなるでしょうか。
そうです、
などの情報を、スマートマスクやタブレットをとおして、公設消防隊が把握することができます。
「G 空間自衛消防支援システム」と「現場活動支援システム」で情報の共有を行うことで、自衛消防隊及び公設消防隊の活動を支援する「防災支援システム(仮称)」の構築を目指しています。
【最新情報】消防士とロボットの融合?【Society5.0時代】のまとめ
この記事では、消防士に関係する最新技術について解説しました。
主な先進的技術をまとめると次のとおり。
消防に関するSociety5.0時代の最新技術が理解いただけたと思います。
このような技術が普及し、市民にとっても消防隊にとても、より安全で住みやすい社会になることを望みます。
今後も、新しい情報が入り次第、レポートを更新していきます。
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また、消防関係者の方で、うちの本部ではこうなってるよ、それは違うんじゃない?などのご意見をいただける際も、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご連絡いただけると助かります。
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