すべての飲食店に対して、消防法上の消火器のルールが変わったって聞いたんだけど何が変わったの?
くわしく説明します!
今回の記事は、飲食店の消火器事情について、平成30年の法令改正をテーマにレポートします。
飲食店の消火器については、設置基準や免除規定、設置場所など多くの変更点が発生しています。
飲食店のオーナーの方には目からウロコの内容となっています。
今回の記事も、現役消防士や消防職員OBの方々からの情報をもとに解説します。
この記事を読むことで、飲食店の消火器事情がまるわかりです。
それでは、レポートします。
飲食店に設置する消火器の設置基準改正の概要
いままでは、延べ面積150㎡以上の飲食店に限り、消火器の設置が義務付けられていました。
しかし、延べ面積150㎡未満の小規模飲食店においても、
を目的として、消火器の設置を義務付けることが必要だと考えが改められました。
そこで、
消防法施行令の一部を改正する政令
(平成30年政令第69号)
が公布され、原則として、延べ面積にかかわらず、消火器の設置が義務化されました。
原則ということは、例外があるということです。
その例外というのは、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられた小規模飲食店(150㎡未満)は、消火器の設置が不要というものです。
「防火上有効な措置」というのは、今回の改正に関連して公布された、
消防法施行規則の一部を改正する省令
(平成30年総務省令第12号)
に規定されています。
また、この改正規則には、小規模飲食店において、
についても規定されています。
これから、この概要を詳しくレポートします。
小さな飲食店にも消火器が必要だと考えを改めたきっかけ
平成28年12月22日(木)10時20分頃に新潟県糸魚川市で火災が発生しました。
出火原因は、出火建物である中華料理店の鍋の空焚きです。
この火災は、フェーン現象に伴う強い南風により広範囲に延焼拡大し、次のような被害が発生しました。
焼損床面積 | 焼損棟数 | けが人 | 死者 |
30,231㎡ | 147棟 | 17人 | 0人 |
火元建築物の概要は次のとおりでした。
構造 | 用途 | 延べ面積 | 収容人員 |
木造2階建て | 飲食店 | 135.8㎡ | 29人 |
この大火災を受け、総務省消防庁に
「糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会」
(座長:室﨑益輝 神戸大学名誉教授)
が設置されました。
火災の発生状況や、今後の消防のあり方について検討が行われています。
平成29年1月に、検討会での検討結果を踏まえて報告書が仕上がりました。
この報告書では、火災予防対策として、次のように提言されています。
延べ面積150㎡ 未満の飲食店にあっては、一部の地方公共団体の火災予防条例により消火器の設置が義務付けられているものの、全国的には義務付けられておらず、飲食店のこんろ火災の危険性に鑑み、こうした飲食店にも消火器の設置を義務付ける方向で検討すべきである。
糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会報告書
上記報告書による提言や、総務省消防庁において検討を行った結果を踏まえ、今までは消火器の設置が義務ではなかった小規模(150㎡未満)な飲食店にも、消火器の設置を義務付けることが必要だと考えが改められました。
改正後の消火器設置基準の内容
改正前は、先ほどから言っているように、飲食店においては、延べ面積が150㎡以上のものに限って消火器の設置が義務づけられていました。
しかし、今回法改正のきっかけとなった火災は、小規模飲食店(延べ面積135.8㎡)のこんろが火元として発生しています。
小規模飲食店などにおいても、それなりの火災危険性があることが明らかとなりました。
また、小規模飲食店等における火災発生原因を検証すると、「こんろ」が原因で発生した火災件数は、全体の約6割を占めていました。
他の火災発生原因を大きく上回っていました。
したがって、すべての小規模飲食店等を対象に消火器具の設置を義務づけるのではなく、こんろ等の火を使用する設備や器具を設けている飲食店に限って義務づけられました。
つまり、コンロなどの設置がない飲食店(150㎡未満)は、消火器は不要だということです。
ただ、こんろ等の「火を使用する設備又は器具」の中には、温度の異常な上昇を感知し、自動的に火を消す装置を設けているものがあります。
また、自動消火装置を設けたコンロなどもあります。
このようなコンロについては、火災の発生危険が低いものとして、消火器具の設置義務を免除することとしました。
免除の詳細について、これから説明します。
防火上有効な措置について
コンロなどの「火を使用する設備又は器具」のうち、「防火上有効な措置として総務省令で定める措置」が講じられたものについては、消火器具の設置義務の対象としないと説明しました。
この、「防火上有効な措置」とは、消防法施行規則第5条の2に、次のように書かれています。
調理油過熱防止装置、自動消火装置又はその他の危険な状態の発生を防止するとともに、発生時における被害を軽減する安全機能を有する装置を設けること。
消防法施行規則第5条の2
次の3つの条件のどれかに該当すれば、消火器は不要なようです。
それぞれ説明します。
調理油過熱防止装置
調理油過熱防止装置とは、鍋底温度の過度な上昇を感知して、自動的に火を消す装置のことです。
一般的には“Siセンサー”と呼ばれています。
平成20年度から、家庭用ガスこんろに装着が義務づけられています。
このような安全装置を設けた火を使用する設備だけしか使用しない小規模(150㎡未満)飲食店においては、法改正後も消火器の設置は必要ありません。
似た機能で、立ち消え防止安全装置があります。
立ち消え防止安全装置というのは、鍋からの吹きこぼれによりコンロの火が消えた場合に、ガスの供給を停止してガス漏れを防止するというものです。
この立ち消え防止安全装置は、温度の過度な上昇を感知して火を消す機能はありません。
したがって、立ち消え防止安全装置は「防火上有効な措置」には含めません。
自動消火装置
自動消火装置とは、昔から法令で定められたものをさしています。
「対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令」(平成14年総務省令第24号)第11条第7号に規定されています。
その内容は次のとおり。
火を使用する設備又は器具を防護対象物(自動消火装置によって消火すべき対象物をいう。)とし、当該部分の火災を自動的に感知し、消火薬剤を放出して火を消す装置
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令
ひとことで言うと、局所的スプリンクラー設備のようなものですね。
火災になっても、その火災を感知して、消火してくれる装置。
読んで字のごとくです。
このような装置を設けた場合、消火器の設置義務はなくなります。
その他
カセットコンロの中には、カセットボンベ内の圧力の上昇を感知し、自動的にカセットボンベからカセットコンロ本体へのガスの供給を停止することにより、火を消す装置である圧力感知安全装置が搭載されているものがあります。
「その他の危険な状態の発生を防止するとともに、発生時における被害を軽減する安全機能を有する装置」とは、この圧力感知安全装置が該当します。
つまり、圧力感知安全装置が搭載されたカセットコンロのみを使用する小規模飲食店は、消火器具の設置義務がありません。
消火器具の設置場所について
消火器を設置する場所というのは、防火対象物の各階ごとに設置しなければならないとされてきました。
しかし、今回の改正は、火を使用する設備又は器具の火災危険性に着目したものです。
そのため、今回新たに消火器を設置することになった小規模飲食店等は、各階ごとに消火器を設置する必要はなく、火を使用する設備又は器具が設置されている階に消火器を設置すればよいこととしています。
根拠は、消防法施行規則第6条第6項第2号です。
義務により設置した消火器には点検義務が発生します
消防法令により設置することが義務づけられた消火器は、定期的に点検し、消防署に報告する必要があります。
つまり、今回の改正により新たに消火器を設置することになった小規模飲食店も、消防署に消火器の点検結果を報告する必要があります。
いきなりそんなこと言われても???ですよね。
そこで、総務省消防庁が、消火器点検の報告書作成を支援するためのツールとして、消火器点検アプリの提供を開始しています。
平成30年4月1日より、ダウンロード開始となっています。
アンドロイドはこちら。
iOSはこちら。
また、消火器の点検制度を説明したパンフレットも作成しています。
インターネットで確認することができます。
【法改正】飲食店の消火器が設置も点検も義務化!【罰則あり】まとめ
今回は、小規模な飲食店の消火器事情についてレポートしました。
まとめると次のとおり。
150㎡未満の飲食店を経営する人にとっては、重要な内容です。
何もなければ、そこまでの責任問題になることはありません。
しかし、もしも火災が起きて死傷者が出ようものなら、法的制裁を徹底的に食らいます。
法人の場合、最高違反金は1億円です。
火を使用する建物の責任者という自覚をもって、法令遵守は抜かりなく。
不安がある場合は、最寄りの消防署にお尋ねください。
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