こんにちは、TEAM WEBRIDです。
INSARAGというキーワード、知っていますか?
INSARAGというのは、IRT(国際消防救助隊)の派遣の際などによく耳にする言葉です。
消防士の中でも、規模の小さな消防本部などではなじみの薄いキーワードです。
今回は、INSARAGをテーマにレポートしてみたいと思います。
今回の記事も、現役消防士の方や消防職員OBの方々からの調査結果をもとにレポートします。
この記事を読むことで、INSARAGについての知識が深まり、消防士の海外派遣について仕組みを理解することができます。
それでは、レポートします。
【都市型捜索】INSARAGとは?

INSARAGというのは、一言でいうと、国際捜索救助諮問グループ(または国際捜索救助チームのネットワーク)のことです。
1991年に、国際連合災害救済調整官事務所を事務局として設立されました。
1992年に、国際連合災害救済調整官事務所は、国際連合人道問題局と合体し、国際連合事務局のひとつ、OCHA(国際連合人道問題調整事務所)となっています
INSARAGが設立された契機は?

1988年にマグニチュード7.2の規模のアルメニア地震が起きました。
この時、多くの行方不明者が出たため、国際捜索救助チームが各国から派遣されました。
しかし、被災国の意向を無視したり、国際捜索救助チーム間で調整のとれない活動を行ったりしたことで、被災国の負担となりました。
この時の反省から、国際救助チームにもルールが必要だということになったわけです。
INSARAGの目的は?

INSARAGガイドラインに代表される共通のルール作りを通じ、効率的な国際捜索救助活動を目指すことをその主たる目的としています。
INSARAGの特徴

捜索救助と一言でいっても、その意味するところは多くの条件に分かれます。
例えば、山岳捜索救助であったり、水難捜索救助であったりという意味です。
INSARAGでは都市部における地震災害等の際に必要となる、都市型捜索救助(Urban Search and Rescue: USAR)をその主な対象としています。
日本とINSARAGとの関わり

日本は、1991年にドイツで開催された第一回会合からINSARAGに参加しています。
2010年に、INSARAGの20年の歴史で初となる、グローバル会合を神戸で開催しています。
2016年には東京で、INSARAGチームリーダー会合を開催しています。
最近では、2018年のINSARAGアジア太平洋地域グループの議長に、日本が選出されています。
日本は現在まで、継続してINSARAGの諸活動に貢献しています。
INSARAGによる救助チームの分類(IEC)

IEC(INSARAG External Classification: IEC)とは、各国の国際捜索救助チームを中チームまたは重チームに分類する評価制度です。
2005年から開始されています。
IECの目的は、次のとおりです。
被災国に対して、INSARAGで『中レベル』または『重レベル』と認定されたチームのデータベースを提供すること
『中』または『重』と認定されたチームは、
などを行うことが保証できるチームです。
そのため、派遣された際に、被災国の負担とならないことを、被災国政府に対して確約するものとなっています。
なお、IECで認定を得るためには、NSARAGガイドライン内のIECチェックリストに含まれる約140のチェックリストの全てについて満たす必要があります。
また、一度IECにおいて認定を得た後も、5年ごとに再認定を受験する必要があります。
2回目以降のIECはIER(INSARAG External Reclassification: IER)と表現されます。
そのため、全体をさす場合にIEC/Rと表現されることもあります。
つまり、5年ごとにIERを受検する必要があります。
各チームは、継続したチーム能力の強化が求められています。
IEC受検にあたっては、36時間連続のシミュレーション演習を行います。
受験にあたる救助チームは、
などによって構成される70人の救助チームです。
他国のIEC認定済チームから派遣された評価員がIECチェックリストを確認し、全てのチェック項目を満たせば認定を得られるという評価システムです。
IEC受検の2年前には他チームからメンター(指導者)を招き、IEC受検に向けた準備を開始することが全ての受検チームに求められています。
レベルの低い救助チームが、IECを受験することを防げる効果がありますね。
IEC受験のメリットはあるのか?

すでに技術的に高いレベルにあるとされる救助チームについては、IEC受検の必要がないと考えられます。
しかし、INSARAGでは国際的に派遣される全ての捜索救助チームに対して受検を強くすすめています。
というのも、IECの認定があることで、信頼が高いため、被災地における活動現場割り当てでは、IEC認定チームが優先して現場を割り当てられます。
また、IEC認定を受けていないと、被災国からチームの受け入れ自体を拒否される可能性もあります。
そのため、JDR救助チーム(日本の国際緊急援助隊チーム)もIECを受検しています。
2010年3月にIECを受検し、『重』認定を得ています。
その後2015年3月にIEC(2回目以降のIECなので正確にはIER)を受検し、 引き続き『重』認定の継続に成功しています。
再び「重」の評価を取得したことにより、今後も海外の災害現場で優先的に任務を与えられます。
JDRの活躍が期待されます。
2005年のIEC開始以降、日本を含めて、50を超える国のチームがIEC認定を受けています。
【都市型捜索】INSARAGとは?ガイドラインを徹底解説のまとめ

INSARAGについてレポートしました。
まとめると、次のとおり。
国際援助となってくると、日本国民にとってはなかなか身近に感じる制度ではありません。
しかし、少しの知識があるだけでも、海外での大規模な災害が発生したとき、考えられることが見つかると思います。
今後も、新しい情報が入り次第、レポートを更新していきます。
この記事を読まれた方で、さらに詳しく知りたいことがあれば追跡調査しますので、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご質問ください。
また、消防関係者の方で、うちの本部ではこうなってるよ、それは違うんじゃない?などのご意見をいただける際も、コメントか問い合わせフォーム、またはTwitterにてご連絡いただけると助かります。
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